写真は,人々の思い出を記録する,すばらしいシステムである。しかし,カメラを一般の人が使うことは,決して容易ではなかった。操作に,それなりの知識や慣れが必要だったからである。そのような問題点の1つに,フィルムの装填があった。 カートリッジフィルムは,フィルムの装填を容易にした。また,カメラそのものの構造も簡単になり,低価格化にも貢献した。
誰にでも簡単に使えることを目指したカメラであるため,複雑な機能をもたない簡便なカメラが多いことも特徴といえよう。カメラの価格も押さえられており,それに見合って,固定焦点や固定露出のものも多い。 システムカメラとしては,126カートリッジのINSTAMATIC REFLEXや,110カートリッジのPENTAX AUTO110などがあったが,全体的には高級機があまり登場せず,結果として35mmフィルムに変わって主流の座を占めるには至らなかったようだ。 IX240フィルムもカートリッジフィルムの一種といえよう。このフィルムを使うカメラ(いわゆるAPS)は高級機も多く発売されたが,ディジタルカメラの普及にともなうようにカメラの製造から撤退するメーカーが相次いだ。そして,販売数量の大幅な低下や生産に必要な材料の入手難などの理由で,フィルムの製造も終了し,メーカー在庫の供給も2011年12月ころに終了する見込みとされていた。 2023年6月現在では,110カートリッジフィルムやMINOX用フィルムは,有効期限内のフィルムが専門店でわずかだが扱われているようだが,それ以外のフィルムはほとんど見かけなくなっている。
1996年に登場した規格。フィルムには磁気記録部があり,コマごとにプリント情報や撮影情報などが記録でき,ラボでのプリントの際にそのデータを活用することができるようになっている。このシステム全体は「アドバンスト・フォト・システム(APS)」とよばれた。 画面サイズはライカ判の約60%程度にあたる16.7mm×30.2mmである。このサイズはH(ハイビジョン)サイズとよばれる。撮影時に,ライカ判と同様の縦横比になるように左右をトリミングしたCサイズや,いわゆるパノラマサイズになるように天地をトリミングしたP(パノラマ)サイズでプリントするように指定できる機能が準備されている。また,カートリッジを撮影途中に交換できる機能(MRC)も準備されている。ただし,廉価なカメラでは,これらの機能が省略されている場合も多い。 ニコンやキヤノン,ミノルタなどからは,このフィルムを使用するシステム一眼レフカメラも発売されたが,ディジタルカメラの登場と時期が重なったこともあり,その流行は短期間で終わった。そして,コダックは2010年12月をもって,APSフィルムの製造・販売を終了した。富士フイルムも,在庫かぎりでの販売終了を,2011年7月に発表した。 2018年5月現在,市場には使用期限の切れたフィルムが多少は流通し,処理を受け付ける現像所もまだ残っているので,APSカメラが使用できなくなったわけではない。しかし,フィルムの劣化がすすみ,実用することが困難な状態になってきている。現像インフラの老朽化もすすんでいるので,現在のような状況がこれからも長く続くとは,考えないほうがよいだろう。また,磁気記録部が必要なために,単純にカートリッジにフィルムを詰めても使えるようにはならないようだ。使用済みのカートリッジにフィルムを詰め替えたものが売られるというケースを見かけることもない。
1982年に登場した規格。直径6.5cmで,4×5判シートフィルムのように厚い円盤状のフィルムがケースに入ったもので,フィルムの周囲に15コマが撮影できるようになっている。カメラが非常に薄くなるというメリットがあったものの,8.2mm×10.6mmという小さな画面サイズが災いしたのか,日本国内ではあまり普及することもなく,早くからフィルムの入手が困難になり,現像処理もおこなわれなくなった。また,アメリカでも,1998年末でフィルムの製造が完全に終了した。
1971年に登場した規格。カートリッジには,幅16mmで裏紙のついたフィルムが入っており,画面サイズは13mm×17mmである。「ポケットインスタマチック」という名称で発売されたが,後には「ポケットフィルム」「ポケットサイズ」あるいは「ワンテン」とよばれるようになる。レンズ交換の可能なシステム一眼レフから,まさにおもちゃのごときカメラに至るまで,さまざまな種類のカメラが登場して一時はかなり普及したものの,35mm判カメラの小型化が進むと,画質面で不利なためか,次第に使われなくなっていった。富士フイルムは,2009年9月に110フィルムの販売を終了した。コダックもそれ以前に終了している。今後も110カメラを使い続けるには,使用済のカートリッジを確保しておき,120や135フィルムから切り出して巻きなおすなどの自作が必要になる。ただし,こうやって自作したフィルムにはパーフォレーションがないため,本来あったパーフォレーションを巻き止めやシャッターチャージに利用しているタイプのカメラには使用できない。
2012年5月16日に,Lomographyから110フィルムの再生産販売が発表された(Lomography Orca 110 B&W Film)。今後,安定して供給されるかどうかはわからないし,初回生産分については「背面紙がありません」「1コマごとスプールはとまらない」とのことで,本来あるべき裏紙やパーフォレーションがないようである。このままでは使えるカメラがかなり限定されるが,今後の展開が期待できる状況になった。 その後,「110Fukkatsu」という名称のフィルムが発売されたこともあったが,その後,見かけなくなった。全体的にフィルムの供給が減少している2023年6月現在でも,Lomographyで何種類かのフィルムを購入することができるのは,ありがたいことである。
1963年に登場した規格で,「インスタマチック」とよばれた。カートリッジには,幅35mmで裏紙のついたフィルムが入っており,画面サイズは26mm×26mmである。一時は,レンズ交換可能なシステム一眼レフカメラから簡便なカメラまで,多くのラインアップがそろっていた。しかしながら,フィルム装填こそ簡単になったものの,カメラ全体の小型化に貢献したとは言い難いせいか,さらに小型の110カートリッジフィルムが登場すると,急速に使われなくなったようである。コダックでは,1999年末をもって,フィルムの販売が終了した。
幅16mmのフィルムがカートリッジにはいったもので,ミゼット判とよばれる画面サイズが10mm×14mmのフィルムを使用するカメラと,クォーターサイズとよばれる画面サイズが12mm×17mmのフィルムを使用するカメラとが,一般的に16ミリカメラとして扱われているようである。いずれの規格のフィルムも,すでに製造されていない。
超小型カメラとして有名なミノックス用のフィルムで,幅9.5mmのフィルムがカートリッジにはいっており,画面サイズは8mm×11mmとして使用する。 近年までは,「アクメル」(キング,浅沼商会)ブランドでフィルムが発売されていた。その後は,「シャラン」のブランドでモノクロネガフィルムやカラーネガフィルムが売られていた。2023年6月にも,販売されている例が見られる。(例:八百富写真機店)。
カートリッジフィルムの必要性
写真は,人々の思い出を記録する,すばらしいシステムである。しかし,カメラを一般の人が使うことは,決して容易ではなかった。操作に,それなりの知識や慣れが必要だったからである。そのような問題点の1つに,フィルムの装填があった。
カートリッジフィルムは,フィルムの装填を容易にした。また,カメラそのものの構造も簡単になり,低価格化にも貢献した。
簡便なカメラが主流
誰にでも簡単に使えることを目指したカメラであるため,複雑な機能をもたない簡便なカメラが多いことも特徴といえよう。カメラの価格も押さえられており,それに見合って,固定焦点や固定露出のものも多い。
システムカメラとしては,126カートリッジのINSTAMATIC REFLEXや,110カートリッジのPENTAX AUTO110などがあったが,全体的には高級機があまり登場せず,結果として35mmフィルムに変わって主流の座を占めるには至らなかったようだ。
IX240フィルムもカートリッジフィルムの一種といえよう。このフィルムを使うカメラ(いわゆるAPS)は高級機も多く発売されたが,ディジタルカメラの普及にともなうようにカメラの製造から撤退するメーカーが相次いだ。そして,販売数量の大幅な低下や生産に必要な材料の入手難などの理由で,フィルムの製造も終了し,メーカー在庫の供給も2011年12月ころに終了する見込みとされていた。
2023年6月現在では,110カートリッジフィルムやMINOX用フィルムは,有効期限内のフィルムが専門店でわずかだが扱われているようだが,それ以外のフィルムはほとんど見かけなくなっている。
IX240カートリッジフィルム
1996年に登場した規格。フィルムには磁気記録部があり,コマごとにプリント情報や撮影情報などが記録でき,ラボでのプリントの際にそのデータを活用することができるようになっている。このシステム全体は「アドバンスト・フォト・システム(APS)」とよばれた。
画面サイズはライカ判の約60%程度にあたる16.7mm×30.2mmである。このサイズはH(ハイビジョン)サイズとよばれる。撮影時に,ライカ判と同様の縦横比になるように左右をトリミングしたCサイズや,いわゆるパノラマサイズになるように天地をトリミングしたP(パノラマ)サイズでプリントするように指定できる機能が準備されている。また,カートリッジを撮影途中に交換できる機能(MRC)も準備されている。ただし,廉価なカメラでは,これらの機能が省略されている場合も多い。
ニコンやキヤノン,ミノルタなどからは,このフィルムを使用するシステム一眼レフカメラも発売されたが,ディジタルカメラの登場と時期が重なったこともあり,その流行は短期間で終わった。そして,コダックは2010年12月をもって,APSフィルムの製造・販売を終了した。富士フイルムも,在庫かぎりでの販売終了を,2011年7月に発表した。
2018年5月現在,市場には使用期限の切れたフィルムが多少は流通し,処理を受け付ける現像所もまだ残っているので,APSカメラが使用できなくなったわけではない。しかし,フィルムの劣化がすすみ,実用することが困難な状態になってきている。現像インフラの老朽化もすすんでいるので,現在のような状況がこれからも長く続くとは,考えないほうがよいだろう。また,磁気記録部が必要なために,単純にカートリッジにフィルムを詰めても使えるようにはならないようだ。使用済みのカートリッジにフィルムを詰め替えたものが売られるというケースを見かけることもない。
レンズ交換式APSカメラ
ニコン プロネア S
Nikon / PRONEA S
キヤノン EOS IX50
Canon / EOS IX50
ニコン プロネア600i
Nikon / PRONEA 600i
ミノルタ ベクティス S-1
MINOLTA / VECTIS S-1
レンズ交換式APSカメラ用レンズ
IXニッコール 30-60mm F4-5.6
Nikon / IX-NIKKOR 30-60mm F4-5.6
IXニッコール 60-180mm F4.5-5.6
Nikon / IX-NIKKOR 60-180mm F4.5-5.6
ミノルタ Vレンズ 28-56mm F4-5.6
MINOLTA / V Lens 28-56mm F4-5.6
レンズ固定式APSカメラ
フジ ネクシアQ1(キューワン)
FUJI / nexia Q1
ライカ C11
Leica / C11
ミノルタ ベクティス 300L
MINOLTA / VECTIS 300L
フジ ネクシア320ixZ
FUJI / nexia 320 ixZ
ミノルタ ベクティス2000
MINOLTA / VECTIS 2000
キヤノン イクシ320
Canon / IXY320
フジ エピオン3000 シューター
FUJI / EPION 3000
ゴコー マクロマックス FR-2200
GOKO / MacromaX FR-2200
ミノルタ ベクティスGX-4 イエローエンジェル
MINOLTA / VECTIS GX-4
オリンパス センチュリオン
OLYMPUS / Centurion
キヤノン イクシ
Canon / IXY
フジ エピオン250Z
FUJI / EPION 250Z
ディスクフィルム
1982年に登場した規格。直径6.5cmで,4×5判シートフィルムのように厚い円盤状のフィルムがケースに入ったもので,フィルムの周囲に15コマが撮影できるようになっている。カメラが非常に薄くなるというメリットがあったものの,8.2mm×10.6mmという小さな画面サイズが災いしたのか,日本国内ではあまり普及することもなく,早くからフィルムの入手が困難になり,現像処理もおこなわれなくなった。また,アメリカでも,1998年末でフィルムの製造が完全に終了した。
コダック ディスク4000
Kodak / disc4000
110カートリッジフィルム
1971年に登場した規格。カートリッジには,幅16mmで裏紙のついたフィルムが入っており,画面サイズは13mm×17mmである。「ポケットインスタマチック」という名称で発売されたが,後には「ポケットフィルム」「ポケットサイズ」あるいは「ワンテン」とよばれるようになる。レンズ交換の可能なシステム一眼レフから,まさにおもちゃのごときカメラに至るまで,さまざまな種類のカメラが登場して一時はかなり普及したものの,35mm判カメラの小型化が進むと,画質面で不利なためか,次第に使われなくなっていった。富士フイルムは,2009年9月に110フィルムの販売を終了した。コダックもそれ以前に終了している。今後も110カメラを使い続けるには,使用済のカートリッジを確保しておき,120や135フィルムから切り出して巻きなおすなどの自作が必要になる。ただし,こうやって自作したフィルムにはパーフォレーションがないため,本来あったパーフォレーションを巻き止めやシャッターチャージに利用しているタイプのカメラには使用できない。
2012年5月16日に,Lomographyから110フィルムの再生産販売が発表された(Lomography Orca 110 B&W Film)。今後,安定して供給されるかどうかはわからないし,初回生産分については「背面紙がありません」「1コマごとスプールはとまらない」とのことで,本来あるべき裏紙やパーフォレーションがないようである。このままでは使えるカメラがかなり限定されるが,今後の展開が期待できる状況になった。
その後,「110Fukkatsu」という名称のフィルムが発売されたこともあったが,その後,見かけなくなった。全体的にフィルムの供給が減少している2023年6月現在でも,Lomographyで何種類かのフィルムを購入することができるのは,ありがたいことである。
ペンタックス オート110システム
ペンタックス オート110 (ワンテン)
PENTAX / auto110
オート110用広角レンズ 18mm F2.8
PENTAX / PENTAX-110 18mm F2.8
オート110用望遠レンズ 50mm F2.8
PENTAX / PENTAX-110 50mm F2.8
その他のポケットカメラ(1980年〜)
イキモノシリーズ フユネコカメラ
PowerShovel / FUYUNEKO camera
(「おもちゃカメラ」のページへ移動します。)イキモノシリーズ ハリネズミカメラ
(unknown) / HARINEZUMI camera
(「おもちゃカメラ」のページへ移動します。)セルビ マイクロ110 ピカフラッシュ
SELBY / MICRO 110 Picaflash
ベルリーザ110
WERLISA / WERLISA 110
チノン ポケットパック フラッシュ テレ
CHINON / Pocketpak Flash Tele
ミランダ ポケットパック 330
Miranda / Pocketpak 330
アーガス フォーミュラ 110 モーター
ARGUS / FORMULA 110 MOTOR
ミラックス 110 フラッシュ
ARGUS (F.E.) / MIRAX 110 FLASH
コダック テレ・エクトラライト600
Kodak / Tele-EKTRALITE 600
ナショナル ラジカメC-R3
National / Radicame C-R3
ナショナル ポケットカメラ C-N1
National / C-N1
ミノルタ ウエザーマチックA
minolta / Weather Matic A
コダック エクトラ200
Kodak / EKTRA200
その他のポケットカメラ(〜1979年)
ポケットフジカフラッシュAW
FUJI / Pocket FUJICA Flash AW
ナショナル ラジカメC-R1
National / Radicame C-R1
ミノルタ ポケットオートパック460T
MINOLTA / POCKET AUTOPAK 460T
コダック ウイナー ポケットカメラ
Kodak / Winner pocekt camera
コダック スタイルエリート
Kodak / Styl'elite pocekt camera
ポケットフジカ350フラッシュ
FUJI / Pocket FUJICA 350 Flash
サンパック SP-1000
SUNPAK / SP-1000
ポケットフジカ350ズーム
FUJI / Pocket FUJICA 350 Zoom
キヤノン 110ED
Canon / 110ED
ミノルタ ポケットオートパック70
MINOLTA / POCKET AUTOPAK 70
コダック ポケットインスタマチック 40
Kodak / pocket INSTAMATIC 40
126カートリッジフィルム
1963年に登場した規格で,「インスタマチック」とよばれた。カートリッジには,幅35mmで裏紙のついたフィルムが入っており,画面サイズは26mm×26mmである。一時は,レンズ交換可能なシステム一眼レフカメラから簡便なカメラまで,多くのラインアップがそろっていた。しかしながら,フィルム装填こそ簡単になったものの,カメラ全体の小型化に貢献したとは言い難いせいか,さらに小型の110カートリッジフィルムが登場すると,急速に使われなくなったようである。コダックでは,1999年末をもって,フィルムの販売が終了した。
コダック インスタマチックレフレックス
Kodak / INTAMATIC REFLEX
旺文社 ハイ・ポーズ126カメラ
OUBUNSHA / Hi-POSE 126
コダック インスタマチック25
Kodak / INSTAMATIC25
ハリーナC1
Halina / C1
16mmカートリッジフィルム
幅16mmのフィルムがカートリッジにはいったもので,ミゼット判とよばれる画面サイズが10mm×14mmのフィルムを使用するカメラと,クォーターサイズとよばれる画面サイズが12mm×17mmのフィルムを使用するカメラとが,一般的に16ミリカメラとして扱われているようである。いずれの規格のフィルムも,すでに製造されていない。
ミノルタ 16 MG-S
Minolta / 16 MG-S
ミノルタ 16 PS
Minolta / 16 PS
ミノックスフィルム
超小型カメラとして有名なミノックス用のフィルムで,幅9.5mmのフィルムがカートリッジにはいっており,画面サイズは8mm×11mmとして使用する。
近年までは,「アクメル」(キング,浅沼商会)ブランドでフィルムが発売されていた。その後は,「シャラン」のブランドでモノクロネガフィルムやカラーネガフィルムが売られていた。2023年6月にも,販売されている例が見られる。(例:八百富写真機店)。
アクメルMD
KING / ACMEL MD
ヤシカ アトロン
YASHICA / ATORON