110判カメラは「ポケットカメラ」ともよばれ,その名の通りにポケットに入れられそうな,長いが薄い形のものが多くみられた。また,だれにでも使えるように,操作が簡単で低価格のものが多く発売された。低価格化のために,EE機構もなく,シャッター速度が固定で「お天気マーク」にあわせて絞りを変えるだけのものや,絞りすら固定のものもあった。ピント調整についても,固定焦点になっているものが少なくないのが,110判カメラである。 しかし,画面の小さな110判で少しでもきれいな写真を撮れるようにしようということであろうか,ピント調整機構のあるカメラもいろいろと発売された。多くは,近景,中景,遠景を切り替える,ゾーンフォーカス式とよばれるものであるが,これだとあまり厳密にはピント調整がおこなえない。厳密なピント調整をおこなえる方式として,35mm判カメラや中判カメラで採用されている方式には,大きく2種類ある。1つは,「一眼レフ」式である。110判カメラでは,たとえばペンタックス「auto110 (オート ワンテン)」という例がある。もう1つは,「レンジファインダーカメラ」とよばれることが多い,レンズのピント調整とファインダーに内蔵した距離計とが連動した「距離計連動」式である。 この,キヤノン「110ED」は,110判カメラとしては例の少ない,距離計連動式のカメラである。
露出制御は,絞り優先AEになっており,絞りを調整するためのスライドレバーとピント調整のためのスライドレバーとが,カメラの上面に並んでいる。フラッシュは内蔵されておらず,フラッシュ撮影をしたいときは「キヤノライトED」と組み合わせて使用すると,フラッシュマチックで撮影できる。 このカメラのもう1つの特徴として,日付の写しこみ機構を備えることがあげられる。日付は,クォーツ時計によって自動的に設定されるものではなく,「年」「月」「日」をあらわすダイアルを1つずつ回してあわせるようになっている。残念ながら「年」については,「77」から「84」と,「0」から「9」しかない。
距離計によってピント調整が厳密におこなえ,絞り優先AEによって絞りやシャッター速度もある程度は自由に選べるので,フィルムが入手できるなら,いまでも十分に楽しめるカメラである。
スペック的には大いに魅力あるカメラだが,問題点も散見される。 1つは,電池を入れる場所である。電池は,フィルム室の蓋をあけなければ,交換できないのだ。電池交換はめったにすることではないが,それだけにいざ交換したいときに,フィルム室の蓋を開けなければならないというのは,フィルムに不要なカブリが生じそうであり,恐ろしく不親切な仕様である。 もう1点,問題と思われるのは,そのフィルム室の蓋の構造である。蝶番を用いずに薄いプラスチックを折り曲げるだけであり,強度面での懸念が大きい。後年のEOS kissなどにも見られる構造で,キヤノンの高級機はじつにしっかりと作りこまれているのだが,それだけに普及機におけるこのような不親切さはあまりに残念である。
110判カメラは「ポケットカメラ」ともよばれ,その名の通りにポケットに入れられそうな,長いが薄い形のものが多くみられた。また,だれにでも使えるように,操作が簡単で低価格のものが多く発売された。低価格化のために,EE機構もなく,シャッター速度が固定で「お天気マーク」にあわせて絞りを変えるだけのものや,絞りすら固定のものもあった。ピント調整についても,固定焦点になっているものが少なくないのが,110判カメラである。
しかし,画面の小さな110判で少しでもきれいな写真を撮れるようにしようということであろうか,ピント調整機構のあるカメラもいろいろと発売された。多くは,近景,中景,遠景を切り替える,ゾーンフォーカス式とよばれるものであるが,これだとあまり厳密にはピント調整がおこなえない。厳密なピント調整をおこなえる方式として,35mm判カメラや中判カメラで採用されている方式には,大きく2種類ある。1つは,「一眼レフ」式である。110判カメラでは,たとえばペンタックス「auto110 (オート ワンテン)」という例がある。もう1つは,「レンジファインダーカメラ」とよばれることが多い,レンズのピント調整とファインダーに内蔵した距離計とが連動した「距離計連動」式である。
この,キヤノン「110ED」は,110判カメラとしては例の少ない,距離計連動式のカメラである。
露出制御は,絞り優先AEになっており,絞りを調整するためのスライドレバーとピント調整のためのスライドレバーとが,カメラの上面に並んでいる。フラッシュは内蔵されておらず,フラッシュ撮影をしたいときは「キヤノライトED」と組み合わせて使用すると,フラッシュマチックで撮影できる。
このカメラのもう1つの特徴として,日付の写しこみ機構を備えることがあげられる。日付は,クォーツ時計によって自動的に設定されるものではなく,「年」「月」「日」をあらわすダイアルを1つずつ回してあわせるようになっている。残念ながら「年」については,「77」から「84」と,「0」から「9」しかない。
距離計によってピント調整が厳密におこなえ,絞り優先AEによって絞りやシャッター速度もある程度は自由に選べるので,フィルムが入手できるなら,いまでも十分に楽しめるカメラである。
スペック的には大いに魅力あるカメラだが,問題点も散見される。
1つは,電池を入れる場所である。電池は,フィルム室の蓋をあけなければ,交換できないのだ。電池交換はめったにすることではないが,それだけにいざ交換したいときに,フィルム室の蓋を開けなければならないというのは,フィルムに不要なカブリが生じそうであり,恐ろしく不親切な仕様である。
もう1点,問題と思われるのは,そのフィルム室の蓋の構造である。蝶番を用いずに薄いプラスチックを折り曲げるだけであり,強度面での懸念が大きい。後年のEOS kissなどにも見られる構造で,キヤノンの高級機はじつにしっかりと作りこまれているのだが,それだけに普及機におけるこのような不親切さはあまりに残念である。