旺文社

ハイ・ポーズ126カメラ

OUBUNSHA / Hi-POSE 126

 旺文社が発行する学習雑誌「中一時代」の昭和57年度年間購読を予約するともらうことができた,126カートリッジフィルムを使う簡便なカメラである。
 ノブを回して巻き上げると,フィルムにあけられたパーフォレーションによって,シャッターがチャージされる。チャージされれば,シャッターレリーズボタンを押すことで,フィルムに露光される。シャッター速度は変更できず,絞りもない。ピント調整はなく,説明書では「明るい場所」で「1.2m以上離れて」写すように指示されている。マジキューブなどのフラッシュを使うための接点も,設けられていない。ごくごく簡便な,カメラである。
 また,生産者や生産国らしいものをあらわす文字は,どこにも見あたらない。発売元となるはずの「旺文社」の名前も,カメラ本体には見あたらない。

 昭和57年,すなわち1982年は,110カートリッジフィルムにかわる規格になるかと注目された,disc 4000カメラが発売された年である。このころすでに,126カートリッジフィルムは過去のものになっていた。そのような時期に,急に126カートリッジフィルムを買い求める人があったことに,個人的にとても驚いた記憶がある。雑誌の年間購読予約特典という形で,まとまった数の126カートリッジフィルムを使うカメラが流通するようになったのである。
 昭和57年度の年間購読予約特典の商品だから,製造後に流通したのは1981(昭和56)年内のことと考えられる。日本カメラ「カメラ年鑑」の1981年版を参照したところ,すでに126カートリッジフィルムを使うカメラは,1機種も掲載されていない。1979年版では,Kodak Instamatic X-15とKodak Instamatic 76Xの2機種が掲載されている。このうちでは76Xのほうが廉価版であるが,それでも「お天気マーク」でシャッター速度が2段階に変化し,マジキューブ(この種のカメラでよく用いられていた小型の閃光電球)が使えるようになっているなど,Hi-POSE126カメラよりはずっとずっと高級なカメラである。だから,これらKodakのカメラとHi-POSE126カメラとは,まったく関係のないものだろう。廉価版とはいえ,Kodak Instamatic 76Xは,4950円もするカメラである。こんな価格のカメラが,6000円ほど(箱に「年間概算定価(予)5,900円」と記されている)の雑誌の付録になるはずなどないのである。
 正体はよくわからないが,当時,HongKongやMacauあたりでつくられていた簡便なカメラと関係があるのではないかと想像する。

Hi-POSE 126, No. ---
撮影レンズ(無名)
露出固定
ピント調節固定
使用フィルム126カートリッジ
発売1982年

 簡便なカメラであるが,取扱説明書は意外なほどに充実したものになっている。126カートリッジフィルムを使うようになっていることについて,取扱説明書内(くすんだ緑色っぽい表紙の小冊子)にも,それとは別の注意書き(黄色い紙)にも,しつこいくらいていねいに書かれている。このことからは当時,126カートリッジフィルムがすでにポピュラーな存在でなくなっていることについて,このカメラを配布した旺文社側もじゅうぶんに理解していたことがうかがえる。