いわゆるAPS-Cサイズの撮像素子をもつ,ディジタル一眼レフカメラである。撮像素子の画素数は340万画素であるが,富士フイルム独特のハニカム構造をもった「スーパーCCDハニカム」であり,補間によって600万画素の画像として記録されるようになっている。
はじめて市販されたデジタル一眼レフカメラは,1991年のKodak DCS 100であるとされている。その後,1994年に発売されたKodak DCS 460は,一体型のデジタル一眼レフカメラとしてはじめて,600万画素で画像を記録するものとなった。当時,「35mmフィルムと同等の画質を得るには,600万画素は必要である」とよく言われていた。厳密に考えればもっと画素数が必要になるようだが,600万画素あればおおむね四切サイズくらいのプリントが可能であるから,実用上せめてこれくらいはほしい,という考えだと思われる。600万画素の画像が得られるのはよいのだが,Kodak DCS 460は349万円もするものであり,その後の1999年に発売されたKodak DCS 660には371万円という価格が設定されていた。個人が趣味で撮影するために気軽に買えるようなものではなかったのである。 一方で,デジタル一眼レフカメラ全体としてはさまざまな機種が登場し,少しずつ価格が低下する傾向も見られた。1999年に発売されたNikon D1は,撮像素子の画素数は270万画素と少なめながらも,Nikon F100に相当すると思われるコンパクトで高性能なボディに,カラー液晶モニタも内蔵していて,65万円という価格が実現されていた。Nikon D1からようやく,個人がデジタル一眼レフカメラを買えるようになったと感じている。
その翌年,2000年に,FUJI FinePix S1 Proが発売された。 先にも書いたように,撮像素子は340万画素のものながら,撮影した結果は600万画素の画像として記録される。そして,価格は375,000円で,Nikon D1のおよそ半額,Kodak DCS 660のおよそ1/10である。カメラ本体は,エントリーモデルのNikon F60を利用したものであるため,使えるレンズの制約が大きいことやカメラ自身のスペックがやや低いなどの不満を感じることもあるが,600万画素のデジタル一眼レフカメラの価格低下がいちだんと進んだのである。 「600万画素のデジタル一眼レフカメラに手が届く」と,購入を前向きに検討していたが,個人的にこのころ仕事が忙しくなったこと,それが片付いたころには可部線の撮影に追われたこともあって,そのときには買い逃してしまった。
本体は,Nikon F60を利用したものになっている。シャッターレリーズ動作をおこなうと,フィルムを巻き上げるような音がする。分解してみると,実際に巻き上げ軸やパトローネが入る部分のDXコードの接点が残っていることなどから,Nikon F60をそのまま利用していることがわかる(いわゆるパノラマフォーマット用のマスク機構がないので,厳密には海外向け仕様のNikon N60なのかもしれない)。そのため,露出計に連動するレンズの制約条件,AF-Sレンズのオートフォーカスが動作しないこと。カメラとしての操作などは,Nikon F60そのものである。 ファインダーは,Nikon F60のものにマスクをしたような状態であるため,上級機にくらべると見え具合がやや劣る。しかしながら,Nikon F80にある格子線表示機能などはなく,シンプルなスクリーンのために,案外とピントなどはわかりやすい。
実際に撮影し,出力されるJPEGファイルを見ると,とても鮮やかな印象を受ける。これは,後のモデルFUJI FinePix S2 Proが出力する自然な鮮やかさにくらべると,ややつくられたような鮮やかさに感じる。誤解を恐れずに強いてたとえれば,FUJI FinePix S2 Proが出力する画像は,REALA ACEの鮮やかさ,FUJI FinePix S1 Proが出力する画像は,Velviaの鮮やかさと言えるだろうか。富士フイルムのデジタルカメラだから,という思い込みもあることはわかっているが,それくらいの差はあるように感じている。
FUJI FinePix S1 Proの短所は,多種類の電池が必要であることだ。これはFUJI FinePix S2 Proでも同様であるが,カメラを動作させるための2個のCR123Aリチウム電池と,デジタル回路を動作させるための4本の単3型乾電池が必要である(そのほか,バックアップ用のCR2025リチウム電池が必要)。ただし,2個のCR123Aリチウム電池のかわりに,専用のアダプタをいれておけば,単3型乾電池4本だけでも撮影が可能である(このとき,内蔵のフラッシュは使えない)。
画素数の面ではものたりないと感じるかもしれないが,このカメラが出力してくれる鮮やかな画像の魅力は,捨てがたいものがある。また,デジタル一眼レフカメラを身近な存在に近づけてくれたカメラとして,後々までその存在は語り継がれるべきだと思う。
いわゆるAPS-Cサイズの撮像素子をもつ,ディジタル一眼レフカメラである。撮像素子の画素数は340万画素であるが,富士フイルム独特のハニカム構造をもった「スーパーCCDハニカム」であり,補間によって600万画素の画像として記録されるようになっている。
はじめて市販されたデジタル一眼レフカメラは,1991年のKodak DCS 100であるとされている。その後,1994年に発売されたKodak DCS 460は,一体型のデジタル一眼レフカメラとしてはじめて,600万画素で画像を記録するものとなった。当時,「35mmフィルムと同等の画質を得るには,600万画素は必要である」とよく言われていた。厳密に考えればもっと画素数が必要になるようだが,600万画素あればおおむね四切サイズくらいのプリントが可能であるから,実用上せめてこれくらいはほしい,という考えだと思われる。600万画素の画像が得られるのはよいのだが,Kodak DCS 460は349万円もするものであり,その後の1999年に発売されたKodak DCS 660には371万円という価格が設定されていた。個人が趣味で撮影するために気軽に買えるようなものではなかったのである。
一方で,デジタル一眼レフカメラ全体としてはさまざまな機種が登場し,少しずつ価格が低下する傾向も見られた。1999年に発売されたNikon D1は,撮像素子の画素数は270万画素と少なめながらも,Nikon F100に相当すると思われるコンパクトで高性能なボディに,カラー液晶モニタも内蔵していて,65万円という価格が実現されていた。Nikon D1からようやく,個人がデジタル一眼レフカメラを買えるようになったと感じている。
その翌年,2000年に,FUJI FinePix S1 Proが発売された。
先にも書いたように,撮像素子は340万画素のものながら,撮影した結果は600万画素の画像として記録される。そして,価格は375,000円で,Nikon D1のおよそ半額,Kodak DCS 660のおよそ1/10である。カメラ本体は,エントリーモデルのNikon F60を利用したものであるため,使えるレンズの制約が大きいことやカメラ自身のスペックがやや低いなどの不満を感じることもあるが,600万画素のデジタル一眼レフカメラの価格低下がいちだんと進んだのである。
「600万画素のデジタル一眼レフカメラに手が届く」と,購入を前向きに検討していたが,個人的にこのころ仕事が忙しくなったこと,それが片付いたころには可部線の撮影に追われたこともあって,そのときには買い逃してしまった。
本体は,Nikon F60を利用したものになっている。シャッターレリーズ動作をおこなうと,フィルムを巻き上げるような音がする。分解してみると,実際に巻き上げ軸やパトローネが入る部分のDXコードの接点が残っていることなどから,Nikon F60をそのまま利用していることがわかる(いわゆるパノラマフォーマット用のマスク機構がないので,厳密には海外向け仕様のNikon N60なのかもしれない)。そのため,露出計に連動するレンズの制約条件,AF-Sレンズのオートフォーカスが動作しないこと。カメラとしての操作などは,Nikon F60そのものである。
ファインダーは,Nikon F60のものにマスクをしたような状態であるため,上級機にくらべると見え具合がやや劣る。しかしながら,Nikon F80にある格子線表示機能などはなく,シンプルなスクリーンのために,案外とピントなどはわかりやすい。
実際に撮影し,出力されるJPEGファイルを見ると,とても鮮やかな印象を受ける。これは,後のモデルFUJI FinePix S2 Proが出力する自然な鮮やかさにくらべると,ややつくられたような鮮やかさに感じる。誤解を恐れずに強いてたとえれば,FUJI FinePix S2 Proが出力する画像は,REALA ACEの鮮やかさ,FUJI FinePix S1 Proが出力する画像は,Velviaの鮮やかさと言えるだろうか。富士フイルムのデジタルカメラだから,という思い込みもあることはわかっているが,それくらいの差はあるように感じている。
FUJI FinePix S1 Proの短所は,多種類の電池が必要であることだ。これはFUJI FinePix S2 Proでも同様であるが,カメラを動作させるための2個のCR123Aリチウム電池と,デジタル回路を動作させるための4本の単3型乾電池が必要である(そのほか,バックアップ用のCR2025リチウム電池が必要)。ただし,2個のCR123Aリチウム電池のかわりに,専用のアダプタをいれておけば,単3型乾電池4本だけでも撮影が可能である(このとき,内蔵のフラッシュは使えない)。
画素数の面ではものたりないと感じるかもしれないが,このカメラが出力してくれる鮮やかな画像の魅力は,捨てがたいものがある。また,デジタル一眼レフカメラを身近な存在に近づけてくれたカメラとして,後々までその存在は語り継がれるべきだと思う。
ディジタル部:単3型電池 4本