1995年に発売されたCASIO QV-10は,ディジタルカメラというものを一般市場に定着させた,まさにエポックメイキングな製品であった。その撮像素子は25万画素で,ピント調整はできず(固定焦点),フラッシュも内蔵されていない。写真を撮る道具としてはやや物足りないものであったが,撮影した画像を内蔵した液晶モニタですぐに見られることや,パソコンに取りこんで利用するなど,あたらしい価値観を定着させた功績は大きい。 画質の面ではまったく物足りない仕様であった一方で,ディジタルカメラならではの特徴として,レンズ部分が回転できるようになっているなど,ディジタルカメラならではの機構も盛りこまれていた。 撮影した画像をパソコン取りこめるという大きな特徴があるものの,メモリカードには対応しておらず,撮影した画像は内蔵メモリにのみ記録される。USB端子やIEEE1394端子などが登場する以前のことであり,パソコンとはシリアル端子(RS-232C)で接続する。撮影した画像をパソコンに取りこむには,専用の接続ケーブルとソフトウェアが必要であった。その他オプション品として,専用のフロッピーディスクドライブが用意されていた。
CASIO QV-10は,おもに低価格化を実現するためと思われるモデルチェンジを繰り返しながらも,基本的なスタイルを変えることはなかった。ここで紹介するCASIO QV-10Aは,1996年に発売されたもので,CASIO QV-10のマイナーチェンジモデルとなる。機能はとくにかわらず,外見的にはボディーカラーが変更された程度である。内部の画像処理ソフトウェアが改善されたというが,撮像素子が25万画素で固定焦点である以上,劇的に画質が向上したという印象にはつながらないだろう。
CASIO QV-10以来の,液晶モニタをファインダーとして使いレンズが自由に回転するというのは,ディジタルカメラならではのスタイルだった。後に,Nikon Coolpix 2500なども,そのようなしくみを取り入れている。シリーズ後継機となる光学ファインダーを設けたCASIO QV-70は,ディジタルカメラならではのスタイルを模索するというスタンスを離れ,従来のフィルムカメラのスタイルと使い勝手に近づくものであった。結局,多くのディジタルカメラが,その方向に進むことになるが,最終的には一眼レフカメラを除いて,光学ファインダーを使わずに液晶モニタを利用する形式に収れんしている。
CASIO QV-10シリーズがヒット商品になったした理由の1つとして,撮影した画像をパソコンに取り込んで使うことができるようになっていた点が指摘されることが多い。CASIO QV-10が発売された1995年3月というのは,Microsoft Windows 3.1がすでに使われており,まもなくWindows 95が発売されるときである。さらに,インターネットが利用できるようにもなってきていた。まさにパソコンの普及がはじまろうとしていた時期であり,パソコンで作成する文書に画像を取り込むための便利なツールとしても注目されることになった面が大きいと考えられる。 CASIO QV-10シリーズでは,CFカードやSDカードといったフラッシュメモリカードが使えるようにはなっておらず,カメラに内蔵されたメモリに画像が記録されるようになっている。そのため,ケーブルでパソコンと接続して画像データを転送する必要がある。この当時,現在の一般的な接続の規格であるUSBはまだなく,周辺機器とパソコンとの接続にはSCSIまたはシリアル接続端子を利用する。CASIO QV-10シリーズに用意されていたのは,シリアル接続端子である。シリアル接続端子のあるパソコンと,専用のケーブルで接続し,パソコン側で専用のソフトウェアを起動して,画像データを転送する。CASIO QV-10シリーズを実用するためには,ケーブルやソフトウェアがセットになった転送キットをみつけたら,ぜひ入手しておきたい。また,シリアル接続端子のある,Windows 95時代のパソコンもぜひ確保しておきたい。
そのほか,CASIO QV-10シリーズのデータを記録することができる,専用のフロッピーディスクドライブ「FD-10」が用意されていた。フロッピーディスクにデータを記録すれば,USB接続のフロッピーディスクドライブなどがあれば古いパソコンを用意しなくてもCASIO QV-10シリーズで撮影した画像を利用できることになる。カメラの内蔵メモリは2MBあるので,カメラにめいっぱい画像を記録すると,当然ながら1枚のフロッピーディスクには収まらない。また,データの転送およびフロッピーディスクへの書き込みは,それなりに遅く,時間がかかる。
なお,フロッピーディスクドライブは経年劣化により故障しやすく,記録メディアであるフロッピーディスクの販売も終了して入手が容易ではなくなっており,この方法も決して安泰なものではない。
CASIO QV-10シリーズで記録される画像ファイルは,一般的なJPEG形式などではない。独自の.camという形式のファイルになっており,別に変換ソフトを用意する必要がある。変換するためのソフトウェアとしては,たとえば「CAMomile32」がある。このソフトウェアは,Vectorでフリーソフトとして公開されている。→CAMomile32(Vectorのサイト)
CASIO QV-10シリーズのカメラは,固定焦点式になっている。画素数も少なく,撮像素子が小さいため被写界深度も深く見えるわけで,固定焦点でもじゅうぶんであると判断されたのだろう。それでも,被写体までの距離が0.3m以遠(絞りがF8の場合)の通常モードと,0.11〜0.21mの接写モードに切り替えられるようになっている。 レンズの焦点距離は5.2mmの単焦点レンズで,一般的な標準レンズ程度の範囲が写るようになっている。それを補うため,広角(×0.7)と望遠(×2.0)のコンバージョンレンズのセットが用意されていた。
情報誌「古デジ通信」試作版001号「CASIO QV-10A」
1995年に発売されたCASIO QV-10は,ディジタルカメラというものを一般市場に定着させた,まさにエポックメイキングな製品であった。その撮像素子は25万画素で,ピント調整はできず(固定焦点),フラッシュも内蔵されていない。写真を撮る道具としてはやや物足りないものであったが,撮影した画像を内蔵した液晶モニタですぐに見られることや,パソコンに取りこんで利用するなど,あたらしい価値観を定着させた功績は大きい。
画質の面ではまったく物足りない仕様であった一方で,ディジタルカメラならではの特徴として,レンズ部分が回転できるようになっているなど,ディジタルカメラならではの機構も盛りこまれていた。
撮影した画像をパソコン取りこめるという大きな特徴があるものの,メモリカードには対応しておらず,撮影した画像は内蔵メモリにのみ記録される。USB端子やIEEE1394端子などが登場する以前のことであり,パソコンとはシリアル端子(RS-232C)で接続する。撮影した画像をパソコンに取りこむには,専用の接続ケーブルとソフトウェアが必要であった。その他オプション品として,専用のフロッピーディスクドライブが用意されていた。
CASIO QV-10は,おもに低価格化を実現するためと思われるモデルチェンジを繰り返しながらも,基本的なスタイルを変えることはなかった。ここで紹介するCASIO QV-10Aは,1996年に発売されたもので,CASIO QV-10のマイナーチェンジモデルとなる。機能はとくにかわらず,外見的にはボディーカラーが変更された程度である。内部の画像処理ソフトウェアが改善されたというが,撮像素子が25万画素で固定焦点である以上,劇的に画質が向上したという印象にはつながらないだろう。
CASIO QV-10以来の,液晶モニタをファインダーとして使いレンズが自由に回転するというのは,ディジタルカメラならではのスタイルだった。後に,Nikon Coolpix 2500なども,そのようなしくみを取り入れている。シリーズ後継機となる光学ファインダーを設けたCASIO QV-70は,ディジタルカメラならではのスタイルを模索するというスタンスを離れ,従来のフィルムカメラのスタイルと使い勝手に近づくものであった。結局,多くのディジタルカメラが,その方向に進むことになるが,最終的には一眼レフカメラを除いて,光学ファインダーを使わずに液晶モニタを利用する形式に収れんしている。
シャッター速度 1/8〜1/4000秒
接写モード(F2.8:0.13m〜0.16m,F8:0.11m〜0.21m)
CASIO QV-10シリーズがヒット商品になったした理由の1つとして,撮影した画像をパソコンに取り込んで使うことができるようになっていた点が指摘されることが多い。CASIO QV-10が発売された1995年3月というのは,Microsoft Windows 3.1がすでに使われており,まもなくWindows 95が発売されるときである。さらに,インターネットが利用できるようにもなってきていた。まさにパソコンの普及がはじまろうとしていた時期であり,パソコンで作成する文書に画像を取り込むための便利なツールとしても注目されることになった面が大きいと考えられる。
CASIO QV-10シリーズでは,CFカードやSDカードといったフラッシュメモリカードが使えるようにはなっておらず,カメラに内蔵されたメモリに画像が記録されるようになっている。そのため,ケーブルでパソコンと接続して画像データを転送する必要がある。この当時,現在の一般的な接続の規格であるUSBはまだなく,周辺機器とパソコンとの接続にはSCSIまたはシリアル接続端子を利用する。CASIO QV-10シリーズに用意されていたのは,シリアル接続端子である。シリアル接続端子のあるパソコンと,専用のケーブルで接続し,パソコン側で専用のソフトウェアを起動して,画像データを転送する。CASIO QV-10シリーズを実用するためには,ケーブルやソフトウェアがセットになった転送キットをみつけたら,ぜひ入手しておきたい。また,シリアル接続端子のある,Windows 95時代のパソコンもぜひ確保しておきたい。
そのほか,CASIO QV-10シリーズのデータを記録することができる,専用のフロッピーディスクドライブ「FD-10」が用意されていた。フロッピーディスクにデータを記録すれば,USB接続のフロッピーディスクドライブなどがあれば古いパソコンを用意しなくてもCASIO QV-10シリーズで撮影した画像を利用できることになる。カメラの内蔵メモリは2MBあるので,カメラにめいっぱい画像を記録すると,当然ながら1枚のフロッピーディスクには収まらない。また,データの転送およびフロッピーディスクへの書き込みは,それなりに遅く,時間がかかる。
なお,フロッピーディスクドライブは経年劣化により故障しやすく,記録メディアであるフロッピーディスクの販売も終了して入手が容易ではなくなっており,この方法も決して安泰なものではない。
CASIO QV-10シリーズで記録される画像ファイルは,一般的なJPEG形式などではない。独自の.camという形式のファイルになっており,別に変換ソフトを用意する必要がある。変換するためのソフトウェアとしては,たとえば「CAMomile32」がある。このソフトウェアは,Vectorでフリーソフトとして公開されている。→CAMomile32(Vectorのサイト)
CASIO QV-10シリーズのカメラは,固定焦点式になっている。画素数も少なく,撮像素子が小さいため被写界深度も深く見えるわけで,固定焦点でもじゅうぶんであると判断されたのだろう。それでも,被写体までの距離が0.3m以遠(絞りがF8の場合)の通常モードと,0.11〜0.21mの接写モードに切り替えられるようになっている。
レンズの焦点距離は5.2mmの単焦点レンズで,一般的な標準レンズ程度の範囲が写るようになっている。それを補うため,広角(×0.7)と望遠(×2.0)のコンバージョンレンズのセットが用意されていた。
情報誌「古デジ通信」試作版001号「CASIO QV-10A」