フジ

ファインピクス F710

FUJI / FinePix F710

 富士フイルムは,2000年3月に発売したFUJI FinePix 4700Z以降,画素の配列をハニカム状にすることで高画質化を狙った「スーパーCCDハニカム」と称する撮像素子をディジタルカメラに採用してきた。「スーパーCCDハニカム」はさまざまな改良が施され,2003年9月に発売されたFUJI FinePix F700では,大きく改良された撮像素子が使われるようになった。この素子は「スーパーCCDハニカムSR」と称しており,白とびや黒つぶれに強く,なめらかな階調表現を実現したとしている。そのしくみとしては,「面積が大きく感度が高い”S画素“と、面積が小さくダイナミックレンジを広くするための“R画素”を持ち、撮影シーンにより、これらの画素の信号を最適に組み合わせて画像を形成し約4倍のダイナミックレンジを実現。」と富士フイルムのWebサイトで説明している(*1)。
 高性能を誇る「スーパーCCDハニカムSR」だが,この撮像素子を採用している機種は,ごく少ない。コンパクトディジタルカメラでは,このFUJI FinePix F710と,前モデルのFUJI FinePix F700の2機種。ディジタル一眼レフカメラでは,FUJI FinePix S3 ProとFUJI FinePix S5 Proだけである。FUJI FinePix F700は発売が何度も延期されたことがあり,結果として比較的高価な機種だけに採用されたこともあわせて考えると,性能はすぐてれいるが生産にやや問題をともなっていたことが想像される。

FUJI FinePix F710の特徴としては,「スーパーCCDハニカムSR」を採用していることのほかに,背面の液晶モニタが16:9のワイド画面になっていることもあげられる。撮影時に,4:3のSTDモードか,16:9のWIDEモードかを選択することもできる。ただしこのWIDEモードは,STDモード時の天地をクロップしてつくられるもので,いわゆる「疑似パノラマ」(ライカ判36mm×24mmの天地をクロップして,パノラマ判36mm×13mmとしたもの)に似たものである。個人的にこのしくみにたちの悪さを感じるのは,撮像素子の天地をクロップしてWIDEモードにしたときには液晶モニタいっぱいに画像が表示されるのに対し,撮像素子をフルに使ったSTDモードのときには液晶モニタの左右が使われていないことで,WIDEモードにしたときのほうが撮像素子をフルに使っているように錯覚しかねない点である。

「スーパーCCDハニカムSR」を採用した効果がどこまで表現されているのかはわからないが,夕方の情景も美しく記録することができる。大きさや重さも手ごろで,扱いやすい。全体的にすぐれたコンパクトディジタルカメラであると感じるだけに,WIDEモードが余計な機能に感じられる点が惜しい。

FUJI FinePix F710, No.42139400
撮像素子タイプ1/1.7型 スーパーCCDハニカムSR 原色フィルタ 撮像素子画素数670万画素
記録画素数最大 (STD) 2832ピクセル×2128ピクセル
最大(WIDE) 2816ピクセル×1584ピクセル
撮影レンズFUJINON ZOOM LENS 7.2mm-28.8mm F2.8-F5.6 (ライカ判で32.5mm-130mm相当(STD))
ピント調節TTLコントラストAF(0.6m〜∞),マクロモード(0.075m〜0.8m)
露出調整プログラムAE,シャッター速度優先AE,絞り優先AE,マニュアル
露出補正±2.0EV (1/3EVステップ)
シャッター速度3秒〜1/2000秒 (メカニカルシャッター併用)
絞りF2.8〜F8 1/3EVステップ10段
記録メディアxDピクチャーカード 16MB〜512MB
電源リチウムイオンバッテリー(NP-40)
発売2004年3月

FUJI FinePix F710, FUJINON ZOOM LENS 7.2mm-28.8mm F3.5-F4.2

 明暗差がある場面を無難に記録してくれるのは,スーパーCCDハニカムSRの恩恵だろうか。

FUJI FinePix F710, FUJINON ZOOM LENS 7.2mm-28.8mm F3.5-F4.2

 暗い場所での撮影結果も,問題はない。


*1ダイナミックレンジが4倍に向上した「スーパーCCDハニカムIV SR」搭載 デジタルカメラ「FinePix F700」新発売 (平成15年2月19日 富士写真フイルム株式会社)