いわゆる「Contax (「CONTAX」ではない)のコピー」とよばれるシステムカメラである。第二次世界大戦後に旧ソ連軍が「Contax」を製造していたドイツのツァイスの工場を接収し,その施設や技術者をキエフにあった工場に移して「Contax」の製造を続けたが,名称は「Kiev」に改めた,というお話がよく広まっている。こうしてつくられたカメラが,このタイプの「キエフ」カメラであるとされる。したがって,「コピー」あるいは「模倣」というよりも,直系の子孫であるとみなすこともできる。とくに,ごく初期のものについては,「Contax」そのものの部品を使ったものもあるといわれている。 「キエフ3a」は,セレン露出計を搭載した「Contax III」を引き継いだとされるモデル「Kiev 3」の後継機にあたり,シンクロ接点が追加されているのが目立つ変更点である。 ところで,「Kiev」の製造番号上2桁は製造された西暦年をあらわすとされているため,このボディは1958年製のものと考えられる。
シャッターは,「Contax」「Kiev」に特有の,金属鎧戸式のものである。
「Contax」では,構図を決めるためのファインダーの窓と,距離計の窓とが1つになった「一眼式」になっている点で,登場当時の「Leica」よりもすぐれていたとされる。もちろん「Kiev」もそのファインダーを引き継いでおり,見やすくピントがあわせやすいことから,使い心地はたいへんよいものである。
レンズマウントは,内爪と外爪とがあるダブルバヨネット式になっている(「Kiev 5」を除く)。 内爪にはヘリコイドがあり,標準レンズは内爪を使用する。そのため,標準レンズにはヘリコイドがない。標準レンズ以外のレンズは,外爪を使用する。カメラを構えたときの右手ひとさし指にあたるところにギアがあるが,これは本体に内蔵されたヘリコイドと連動しており,このギアを操作してもピントを調整することができる。ただし,外爪にとりつけたレンズの場合,このギアではレンズのヘリコイドが重くて,操作ができない。 レンズ交換のときは,ピントを無限遠の位置にしてレンズを取りつける。本体のヘリコイドは,無限遠の位置でロックされるようになっており,ギアの後ろに飛び出しているレバーはそのロックを解除するためのものである。 ニコンSシリーズも同様の形状のレンズマウントを採用しているため,相互にレンズを取りつけることは可能だが,レンズの焦点距離の基準の相違によって距離計に誤差を生じるので注意が必要である。
ビューファインダーシステムカメラ(いわゆるレンジファインダーカメラ)を実用するにあたっての大きな魅力の1つに,一眼レフカメラにくらべて軽量でコンパクトなことがあげられる。一眼レフカメラには,大きなミラーとそれを駆動するメカニズム,そしてプリズムが必要なため,それらが不要なだけ,小型軽量化に有利なのである。また,ミラーの動きがないために,シャッターレリーズのときの音や振動が小さいというのも,ビューファインダーシステムカメラの実用上の大きなメリットとされている。 ところが,である。 「Kiev」には,そういうメリットが少々,薄いのだ。 はっきり言って,重いのである。 ペンタプリズムもないはずなのに,重いのである。 では,さまざまな不便を承知で「Kiev」を持ち出し,使う理由はなにか。それは,カメラの「見た目」の魅力であろう。本物の「Contax」にくらべれば仕上げが粗雑だといわれるが,そういう細かいところではなく,全体のメカニカルな雰囲気に魅力を感じるのである。 「見た目」に着目した場合,「Киев」というロゴにも目が向く。見かけることの多い「Kiev 4」ではキリル文字とローマ文字が併記されたロゴがつけられているが,「Kiev 3a」では多くがこのようにキリル文字だけのロゴになっている。それぞれどちらにも捨てがたい魅力があるが,シンプルだが存在感のあるこのロゴのほうが,個人的には好みである。
ボディのシルエットが直方体に近いため,バッグ等へのおさまり具合はよい。また,交換レンズが一眼レフカメラ用のものにくらべて全般にコンパクトなのは,高く評価できる。交換レンズとしては,35mm,50mm,85mm,135mmのものが入手しやすいだろう。標準レンズは50mmで,明るさなどの違うものが何種類か流通する。とはいえ,この種のカメラは,レンズをとっかえひっかえして使うようなカメラではないだろう。50mmの標準レンズか,35mmの広角レンズか,どちらかに決めて,その日はそれ1本を使うようにするのがクールなつきあい方ではないだろうか。 50mmレンズを使うときの魅力に,シャープな印象を受けるその描写力がある。また,右手ひとさし指の位置にあるギアで軽快なピントあわせが楽しめることも,大きな魅力だ。この背景には,正確で見やすい距離計とファインダーのおかげで,レンズの描写を生かせるようなピント調整が可能であることも忘れてはいけない。 35mm広角レンズを使うときには,街角の雰囲気を気の向くままに撮るような使い方がクールだろう。一眼レフカメラではないため,望遠レンズは少々,使いにくいと感じられる。
いわゆる「Contax (「CONTAX」ではない)のコピー」とよばれるシステムカメラである。第二次世界大戦後に旧ソ連軍が「Contax」を製造していたドイツのツァイスの工場を接収し,その施設や技術者をキエフにあった工場に移して「Contax」の製造を続けたが,名称は「Kiev」に改めた,というお話がよく広まっている。こうしてつくられたカメラが,このタイプの「キエフ」カメラであるとされる。したがって,「コピー」あるいは「模倣」というよりも,直系の子孫であるとみなすこともできる。とくに,ごく初期のものについては,「Contax」そのものの部品を使ったものもあるといわれている。
「キエフ3a」は,セレン露出計を搭載した「Contax III」を引き継いだとされるモデル「Kiev 3」の後継機にあたり,シンクロ接点が追加されているのが目立つ変更点である。
ところで,「Kiev」の製造番号上2桁は製造された西暦年をあらわすとされているため,このボディは1958年製のものと考えられる。
シャッターは,「Contax」「Kiev」に特有の,金属鎧戸式のものである。
「Contax」では,構図を決めるためのファインダーの窓と,距離計の窓とが1つになった「一眼式」になっている点で,登場当時の「Leica」よりもすぐれていたとされる。もちろん「Kiev」もそのファインダーを引き継いでおり,見やすくピントがあわせやすいことから,使い心地はたいへんよいものである。
レンズマウントは,内爪と外爪とがあるダブルバヨネット式になっている(「Kiev 5」を除く)。
内爪にはヘリコイドがあり,標準レンズは内爪を使用する。そのため,標準レンズにはヘリコイドがない。標準レンズ以外のレンズは,外爪を使用する。カメラを構えたときの右手ひとさし指にあたるところにギアがあるが,これは本体に内蔵されたヘリコイドと連動しており,このギアを操作してもピントを調整することができる。ただし,外爪にとりつけたレンズの場合,このギアではレンズのヘリコイドが重くて,操作ができない。
レンズ交換のときは,ピントを無限遠の位置にしてレンズを取りつける。本体のヘリコイドは,無限遠の位置でロックされるようになっており,ギアの後ろに飛び出しているレバーはそのロックを解除するためのものである。
ニコンSシリーズも同様の形状のレンズマウントを採用しているため,相互にレンズを取りつけることは可能だが,レンズの焦点距離の基準の相違によって距離計に誤差を生じるので注意が必要である。
ビューファインダーシステムカメラ(いわゆるレンジファインダーカメラ)を実用するにあたっての大きな魅力の1つに,一眼レフカメラにくらべて軽量でコンパクトなことがあげられる。一眼レフカメラには,大きなミラーとそれを駆動するメカニズム,そしてプリズムが必要なため,それらが不要なだけ,小型軽量化に有利なのである。また,ミラーの動きがないために,シャッターレリーズのときの音や振動が小さいというのも,ビューファインダーシステムカメラの実用上の大きなメリットとされている。
ところが,である。
「Kiev」には,そういうメリットが少々,薄いのだ。
はっきり言って,重いのである。
ペンタプリズムもないはずなのに,重いのである。
では,さまざまな不便を承知で「Kiev」を持ち出し,使う理由はなにか。それは,カメラの「見た目」の魅力であろう。本物の「Contax」にくらべれば仕上げが粗雑だといわれるが,そういう細かいところではなく,全体のメカニカルな雰囲気に魅力を感じるのである。
「見た目」に着目した場合,「Киев」というロゴにも目が向く。見かけることの多い「Kiev 4」ではキリル文字とローマ文字が併記されたロゴがつけられているが,「Kiev 3a」では多くがこのようにキリル文字だけのロゴになっている。それぞれどちらにも捨てがたい魅力があるが,シンプルだが存在感のあるこのロゴのほうが,個人的には好みである。
ボディのシルエットが直方体に近いため,バッグ等へのおさまり具合はよい。また,交換レンズが一眼レフカメラ用のものにくらべて全般にコンパクトなのは,高く評価できる。交換レンズとしては,35mm,50mm,85mm,135mmのものが入手しやすいだろう。標準レンズは50mmで,明るさなどの違うものが何種類か流通する。とはいえ,この種のカメラは,レンズをとっかえひっかえして使うようなカメラではないだろう。50mmの標準レンズか,35mmの広角レンズか,どちらかに決めて,その日はそれ1本を使うようにするのがクールなつきあい方ではないだろうか。
50mmレンズを使うときの魅力に,シャープな印象を受けるその描写力がある。また,右手ひとさし指の位置にあるギアで軽快なピントあわせが楽しめることも,大きな魅力だ。この背景には,正確で見やすい距離計とファインダーのおかげで,レンズの描写を生かせるようなピント調整が可能であることも忘れてはいけない。
35mm広角レンズを使うときには,街角の雰囲気を気の向くままに撮るような使い方がクールだろう。一眼レフカメラではないため,望遠レンズは少々,使いにくいと感じられる。