1985年にMINOLTA α-7000が発売されて以後,各社から35mm判のオートフォーカス一眼レフカメラが発売されるようになった。オリンパスからは1986年に,OLYMPUS OM707というオートフォーカス一眼レフカメラが発売された。フラッシュを内蔵したグリップを装着できるといった特徴があったが,基本的にオートフォーカスとプログラムAE専用のカメラであり,一眼レフカメラとしては物足りない面がある。 1988年には,OLYMPUS OM101が発売された。「0」をはさんだ3桁の型番であり,OLYMPUS OM707用のオートフォーカスレンズを使用することから,OM707の後継機と考えられるが,まったく異なるカメラである。
OLYMPUS OM101は,オートフォーカスではない。カメラの背面部にあるダイアルを使って,ピントリングをモーターで動かす「パワーフォーカス」というしくみを取り入れている。 パワーフォーカス機能は,OM707にもあった。それは,レバーを動かすことで,モーターがピントリングを小刻みに動かすものだった。そもそも扱いにくく,とても精密なピント調整ができそうには思えなかったものである。おそらくは,オートフォーカスではピントがあわないときに,やむをえず使用することが想定されているのであろう。 それに対してOM101のパワーフォーカスは,まったくの別物である。 カメラを構え,シャッターレリーズボタンに指をかけてファインダーを覗くとごく自然に,右手の親指がパワーフォーカスのダイアルにふれるようになる。パワーフォーカスのダイアルをくりくり回すと,それに応じてピントリングが動く。この動きはなめらかで,不自然さを感じない。また,ダイアルをすばやく回すとピントリングは大きく動き,ゆっくり回すとピントリングは少ししか動かない。微妙なピント調整が可能になっている。
OM101は,プログラムAE専用のシンプルなカメラである。この点は,OM707と同等である。しかし,OM101には,「マニュアルアダプタ2」というオプション品が用意されている。これを装着すると,プログラムAEに加えて,絞り優先AEとマニュアル露出が使用できるようになる。この点は,OM707よりはるかに充実していると言える。 「マニュアルアダプタ2」は別売オプションだったために,中古カメラとして流通しているOLYMPUS OM101には,マニュアルアダプタ2が欠品状態のものが少なくない。これを単体で入手することは,難しいかもしれない。しかし,OM101によく似た外見のOLYMPUS SC35という産業用のカメラがあり,このカメラにはマニュアルアダプタ2と同じような部品が付属している。このアダプタは,目盛を読みかえる必要があるが,OM101に流用することができる。
電源は,単4型乾電池を4本使用する。電池が小さい分,カメラも全体にコンパクトにまとまっている。 電池ボックスの蓋は華奢であるが,OM707のものよりは壊れにくいように思う。
使い心地のよいパワーフォーカスを備え,マニュアルアダプタ2を利用でき,しかも電池ボックスの蓋が比較的壊れにくくなっているOLYMPUS OM101は,OLYMPUS OM707の短所に対するじゅうぶんな回答になっている。とくにパワーフォーカスは,じつに快適である。実際に製品化はされていないようだが,パワーフォーカス用のリモコンがあれば,カメラ本体に手をふれずに,ピント調整ができる。これは倍率の高い接写をおこなうときなどに,とても好都合になることが期待できる。さらに,オートフォーカス機構が組みこまれれば,オートフォーカスからそのまま連続的にマニュアルフォーカスに移行するというユーザインタフェースに発展した可能性もあるだろう。 残念ながらOM101はあくまでもエントリーモデルだったようで,ファインダー内の情報が貧弱である。 プログラムAEで使用するときは,ファインダー内に「P」という文字が表示される。暗くなるとこれが点滅し,フラッシュの使用をうながす。 マニュアルアダプタ2を装着しても大差なく,絞り優先AEモードでは「A」という文字が表示され,暗くなると点滅してフラッシュの使用をうながす。絞り値もシャッター速度も,表示されない。 マニュアル露出モードでは,アンダーとオーバーを示す「▼」や「▲」が表示され,両方が点灯したときが適正露出となる。やはり,絞り値やシャッター速度値が表示されることはない。
平凡ではあるが,かっちり写るレンズがあった。パワーフォーカスとマニュアルアダプタが使えた。このようなOM101でこのシリーズが終わってしまったのが,惜しまれる。オートフォーカスとダイアル式のパワーフォーカスが併用でき,ファインダー内情報のしっかりした上位モデルが発売されていたら,カメラの歴史が大きくかわっていた可能性があっただろう。
現実は,OM101に対する評価は,低いようである。 オートフォーカス機構を取り入れなかったせいだろうか,「OM707の機能削減版」「OM707用AFレンズの在庫処理目的」「商業的に失敗したOM707の尻ぬぐい機」のように,OM101に対してのかなり蔑んだ評価をみかけることがある。だが,実際にOM101のパワーフォーカスを体験すれば,そういう印象は覆されるだろう。OM101に対する蔑んだ評価の大半は,OM101を実際に体験しなかった人による「妄想」あるいは「他人の受け売り」ではないかと考えている。「オリンパスAFレンズを,マニュアルフォーカスのOMボディにつけるとはずれなくなる」というデマが付随していれば,その人はOM101を体験せずに語っている可能性がかなり高いと考えられる。
いまからでも遅くない,OLYMPUS OM101を見直そう。
1985年にMINOLTA α-7000が発売されて以後,各社から35mm判のオートフォーカス一眼レフカメラが発売されるようになった。オリンパスからは1986年に,OLYMPUS OM707というオートフォーカス一眼レフカメラが発売された。フラッシュを内蔵したグリップを装着できるといった特徴があったが,基本的にオートフォーカスとプログラムAE専用のカメラであり,一眼レフカメラとしては物足りない面がある。
1988年には,OLYMPUS OM101が発売された。「0」をはさんだ3桁の型番であり,OLYMPUS OM707用のオートフォーカスレンズを使用することから,OM707の後継機と考えられるが,まったく異なるカメラである。
OLYMPUS OM101は,オートフォーカスではない。カメラの背面部にあるダイアルを使って,ピントリングをモーターで動かす「パワーフォーカス」というしくみを取り入れている。
パワーフォーカス機能は,OM707にもあった。それは,レバーを動かすことで,モーターがピントリングを小刻みに動かすものだった。そもそも扱いにくく,とても精密なピント調整ができそうには思えなかったものである。おそらくは,オートフォーカスではピントがあわないときに,やむをえず使用することが想定されているのであろう。
それに対してOM101のパワーフォーカスは,まったくの別物である。
カメラを構え,シャッターレリーズボタンに指をかけてファインダーを覗くとごく自然に,右手の親指がパワーフォーカスのダイアルにふれるようになる。パワーフォーカスのダイアルをくりくり回すと,それに応じてピントリングが動く。この動きはなめらかで,不自然さを感じない。また,ダイアルをすばやく回すとピントリングは大きく動き,ゆっくり回すとピントリングは少ししか動かない。微妙なピント調整が可能になっている。
OM101は,プログラムAE専用のシンプルなカメラである。この点は,OM707と同等である。しかし,OM101には,「マニュアルアダプタ2」というオプション品が用意されている。これを装着すると,プログラムAEに加えて,絞り優先AEとマニュアル露出が使用できるようになる。この点は,OM707よりはるかに充実していると言える。
「マニュアルアダプタ2」は別売オプションだったために,中古カメラとして流通しているOLYMPUS OM101には,マニュアルアダプタ2が欠品状態のものが少なくない。これを単体で入手することは,難しいかもしれない。しかし,OM101によく似た外見のOLYMPUS SC35という産業用のカメラがあり,このカメラにはマニュアルアダプタ2と同じような部品が付属している。このアダプタは,目盛を読みかえる必要があるが,OM101に流用することができる。
電源は,単4型乾電池を4本使用する。電池が小さい分,カメラも全体にコンパクトにまとまっている。
電池ボックスの蓋は華奢であるが,OM707のものよりは壊れにくいように思う。
・マニュアルフォーカスレンズの場合は,絞り優先AE。
・「マニュアルアダプタ2」装着で,絞り優先AEとマニュアル露出が可能。
使い心地のよいパワーフォーカスを備え,マニュアルアダプタ2を利用でき,しかも電池ボックスの蓋が比較的壊れにくくなっているOLYMPUS OM101は,OLYMPUS OM707の短所に対するじゅうぶんな回答になっている。とくにパワーフォーカスは,じつに快適である。実際に製品化はされていないようだが,パワーフォーカス用のリモコンがあれば,カメラ本体に手をふれずに,ピント調整ができる。これは倍率の高い接写をおこなうときなどに,とても好都合になることが期待できる。さらに,オートフォーカス機構が組みこまれれば,オートフォーカスからそのまま連続的にマニュアルフォーカスに移行するというユーザインタフェースに発展した可能性もあるだろう。
残念ながらOM101はあくまでもエントリーモデルだったようで,ファインダー内の情報が貧弱である。
プログラムAEで使用するときは,ファインダー内に「P」という文字が表示される。暗くなるとこれが点滅し,フラッシュの使用をうながす。
マニュアルアダプタ2を装着しても大差なく,絞り優先AEモードでは「A」という文字が表示され,暗くなると点滅してフラッシュの使用をうながす。絞り値もシャッター速度も,表示されない。
マニュアル露出モードでは,アンダーとオーバーを示す「▼」や「▲」が表示され,両方が点灯したときが適正露出となる。やはり,絞り値やシャッター速度値が表示されることはない。
平凡ではあるが,かっちり写るレンズがあった。パワーフォーカスとマニュアルアダプタが使えた。このようなOM101でこのシリーズが終わってしまったのが,惜しまれる。オートフォーカスとダイアル式のパワーフォーカスが併用でき,ファインダー内情報のしっかりした上位モデルが発売されていたら,カメラの歴史が大きくかわっていた可能性があっただろう。
現実は,OM101に対する評価は,低いようである。
オートフォーカス機構を取り入れなかったせいだろうか,「OM707の機能削減版」「OM707用AFレンズの在庫処理目的」「商業的に失敗したOM707の尻ぬぐい機」のように,OM101に対してのかなり蔑んだ評価をみかけることがある。だが,実際にOM101のパワーフォーカスを体験すれば,そういう印象は覆されるだろう。OM101に対する蔑んだ評価の大半は,OM101を実際に体験しなかった人による「妄想」あるいは「他人の受け売り」ではないかと考えている。「オリンパスAFレンズを,マニュアルフォーカスのOMボディにつけるとはずれなくなる」というデマが付随していれば,その人はOM101を体験せずに語っている可能性がかなり高いと考えられる。
いまからでも遅くない,OLYMPUS OM101を見直そう。