1996年に発売された,ニコンFマウントのレンズが使えるディジタル一眼レフカメラである。1995年に発売されたFUJIX DS-505のマイナーチェンジモデルで,ISO感度設定がDS-505の「800および1600相当」から「800および3200相当」になって,室内撮影などが有利におこなえるようになった。そのほか,ホワイトバランスにフラッシュモードや,撮影直後に画像をテレビモニタで確認できるプレビュー撮影モードなどが追加されている。これらのことと,発売元が富士フイルムであることなどをふまえると,この機種はどちらかといえばスタジオでの使用が前提になっているものと思われる。実際にそのころ業務に使ったことのある人から,チラシに使うなど大量で短納期の商品撮影などの現場で好都合だったという話を聞いたことがある(そのときには,ライティングにはある種の蛍光灯が最適だった,とも聞いた)。
撮像素子は2/3インチ型CCDで,当時としてはけっして小さいものではないものの,ライカ判のフィルムにくらべるとはるかに小さなものである。DS-505Aには撮像素子の前に縮小光学系が配置されており,ライカ判サイズの画像を,2/3インチ型CCDのサイズにあわせて縮小するようになっている。そのため,レンズをライカ判のカメラと同じ感覚で使用できる。もちろんファインダーも,ライカ判サイズのもので,とても見やすいものになっている。ただし,レンズによっては内蔵された縮小光学系によってケラレが生じるなど,「レンズの相性」が問題になる場面もある。 DS-505AではニコンFマウントのレンズを使用するが,レンズに内蔵された絞りはつねに開放で使うようになっており,絞りは縮小光学系に内蔵されたものを使うようになっている。そのため,どんな大口径レンズを使っても,開放F値は「F6.8」ということになっている。ボディには,シャッター速度ダイアルと絞りダイアルとがあり,F-401シリーズやF5以降などに似た操作系になっている。 AFニッコール(AF-Sニッコールを含む)を装着したときは,オートフォーカス撮影が可能であり,露出モードもすべて(P,S,A,M)使用できる。マニュアルフォーカスのAiレンズを装着したときはもちろんオートフォーカスは使えないが,すべての露出モード,評価測光が使用できる。「レンズの相性」の問題はあるが,レンズの互換性が非常に広いものになっている。さらにマウント内部の開放F値連動レバーを動かした状態で固定できれば,Ai以前のニッコールレンズも,すべてのモードで使用できる(ただしこれは,本来は想定されていないイレギュラーな使い方となる)。
電源は,専用のNi-Cdバッテリーパックを使う。バッテリーパックのかわりに,ACアダプタでの使用もできる。撮影した画像は,Flash ATAカードに記録する。富士フイルムからは,40MBのものまで発売されていた。
前モデルのFUJIX DS-505を改良し,かつ,低価格化を実現した機種である。ただし低価格化を実現したといっても,本体価格は890,000円(*1)という高価なものである。撮影画像の記録にはメモリカードを使うが,20MBのメモリカード(JPEG高画質モードで約30枚記録可能)の価格が12万円である。メモリカードリーダーも8万円の価格が付けられており,これらトータルの価格を考えると,まだまだ,一般の人が趣味で買えるような性格の製品ではなかったといえる。つまりは業務用として使われたわけだが,その性能は,業務用途にじゅうぶんに答えられるものだったといえるだろう。もちろん,画像のサイズが1280ピクセル×1000ピクセル程度では,後年のディジタル一眼レフカメラにくらべておよぶべくところもないわけだが,チラシに掲載する商品などせいぜい数cm角程度の小さな印刷物に使うのであれば,じゅうぶんな画質である。画素数こそ少ないものの,相性のよいレンズと組みあわせれば,解像度や階調などは,商業印刷物にじゅうぶんなものが得られていた。 アマチュアが風景やポートレート撮影を楽しむには適さないディジタルカメラだったといえるが,仕事としては有用な場面はたしかに存在したのである。現在のディジタルカメラに至る礎を築いたものの1つであることは,間違いない。いま,このディジタルカメラを使わない理由があるとすれば,それは中判ディジタルカメラにも匹敵するその大きさが最大の要素になるだろうか。
*1 →http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj110.html
Li-PO電池に改造し,SDカードを使うことで,バッテリーと記録メディアの問題を解消!初期のデジタル一眼レフカメラFUJIX DS-505Aをすこしでも実用的に使うための工夫を紹介。
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初期のデジタル一眼レフカメラながら,ライカ判サイズのファインダーが魅力のFUJIX DS-505Aだが,特徴である縮小光学系との相性がよくないレンズを組み合わせると,四隅がケラレるなど,実用にならないことがある。ファインダーでは確認できないので,42本のレンズを実際に撮ってたしかめた。
DS-505シリーズのシリアルナンバーを収集している。観察されたナンバー,情報提供いただいたナンバーがあれば,ここに追記する。
1996年に発売された,ニコンFマウントのレンズが使えるディジタル一眼レフカメラである。1995年に発売されたFUJIX DS-505のマイナーチェンジモデルで,ISO感度設定がDS-505の「800および1600相当」から「800および3200相当」になって,室内撮影などが有利におこなえるようになった。そのほか,ホワイトバランスにフラッシュモードや,撮影直後に画像をテレビモニタで確認できるプレビュー撮影モードなどが追加されている。これらのことと,発売元が富士フイルムであることなどをふまえると,この機種はどちらかといえばスタジオでの使用が前提になっているものと思われる。実際にそのころ業務に使ったことのある人から,チラシに使うなど大量で短納期の商品撮影などの現場で好都合だったという話を聞いたことがある(そのときには,ライティングにはある種の蛍光灯が最適だった,とも聞いた)。
撮像素子は2/3インチ型CCDで,当時としてはけっして小さいものではないものの,ライカ判のフィルムにくらべるとはるかに小さなものである。DS-505Aには撮像素子の前に縮小光学系が配置されており,ライカ判サイズの画像を,2/3インチ型CCDのサイズにあわせて縮小するようになっている。そのため,レンズをライカ判のカメラと同じ感覚で使用できる。もちろんファインダーも,ライカ判サイズのもので,とても見やすいものになっている。ただし,レンズによっては内蔵された縮小光学系によってケラレが生じるなど,「レンズの相性」が問題になる場面もある。
DS-505AではニコンFマウントのレンズを使用するが,レンズに内蔵された絞りはつねに開放で使うようになっており,絞りは縮小光学系に内蔵されたものを使うようになっている。そのため,どんな大口径レンズを使っても,開放F値は「F6.8」ということになっている。ボディには,シャッター速度ダイアルと絞りダイアルとがあり,F-401シリーズやF5以降などに似た操作系になっている。
AFニッコール(AF-Sニッコールを含む)を装着したときは,オートフォーカス撮影が可能であり,露出モードもすべて(P,S,A,M)使用できる。マニュアルフォーカスのAiレンズを装着したときはもちろんオートフォーカスは使えないが,すべての露出モード,評価測光が使用できる。「レンズの相性」の問題はあるが,レンズの互換性が非常に広いものになっている。さらにマウント内部の開放F値連動レバーを動かした状態で固定できれば,Ai以前のニッコールレンズも,すべてのモードで使用できる(ただしこれは,本来は想定されていないイレギュラーな使い方となる)。
電源は,専用のNi-Cdバッテリーパックを使う。バッテリーパックのかわりに,ACアダプタでの使用もできる。撮影した画像は,Flash ATAカードに記録する。富士フイルムからは,40MBのものまで発売されていた。
5分割マルチパターン
P,Aモード:1/2〜1/2000秒 1/12段刻み
前モデルのFUJIX DS-505を改良し,かつ,低価格化を実現した機種である。ただし低価格化を実現したといっても,本体価格は890,000円(*1)という高価なものである。撮影画像の記録にはメモリカードを使うが,20MBのメモリカード(JPEG高画質モードで約30枚記録可能)の価格が12万円である。メモリカードリーダーも8万円の価格が付けられており,これらトータルの価格を考えると,まだまだ,一般の人が趣味で買えるような性格の製品ではなかったといえる。つまりは業務用として使われたわけだが,その性能は,業務用途にじゅうぶんに答えられるものだったといえるだろう。もちろん,画像のサイズが1280ピクセル×1000ピクセル程度では,後年のディジタル一眼レフカメラにくらべておよぶべくところもないわけだが,チラシに掲載する商品などせいぜい数cm角程度の小さな印刷物に使うのであれば,じゅうぶんな画質である。画素数こそ少ないものの,相性のよいレンズと組みあわせれば,解像度や階調などは,商業印刷物にじゅうぶんなものが得られていた。
アマチュアが風景やポートレート撮影を楽しむには適さないディジタルカメラだったといえるが,仕事としては有用な場面はたしかに存在したのである。現在のディジタルカメラに至る礎を築いたものの1つであることは,間違いない。いま,このディジタルカメラを使わない理由があるとすれば,それは中判ディジタルカメラにも匹敵するその大きさが最大の要素になるだろうか。
*1 →http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj110.html
FUJIX DS-505Aを実用的に使う本
Li-PO電池に改造し,SDカードを使うことで,バッテリーと記録メディアの問題を解消!初期のデジタル一眼レフカメラFUJIX DS-505Aをすこしでも実用的に使うための工夫を紹介。
A5判,24ページ(カラー) 価格 500円
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FUJIX DS-505A レンズ相性BOOK
初期のデジタル一眼レフカメラながら,ライカ判サイズのファインダーが魅力のFUJIX DS-505Aだが,特徴である縮小光学系との相性がよくないレンズを組み合わせると,四隅がケラレるなど,実用にならないことがある。ファインダーでは確認できないので,42本のレンズを実際に撮ってたしかめた。
A5判,64ページ(カラー) 価格 1400円
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DS-505シリーズのシリアルナンバーを収集している。観察されたナンバー,情報提供いただいたナンバーがあれば,ここに追記する。