京セラ

サムライ

KYOCERA / SAMURAI

 「サムライ」は,ハーフサイズカメラとしては貴重な,「一眼レフ」形式のカメラである。1980年代後半にふたたびやってきた,つかの間のハーフサイズカメラのブームを代表するカメラである。
 プログラムAE,AF,パワーズーム,オートフラッシュ,ワインダーを搭載し,主要な操作ボタンは構えたときの右手に集中している。このスタイルで非常にホールディングしやすく,まさに「片手で撮影可能」なカメラになっている。ズームレンズ固定式のフルオート一眼レフカメラというスタイルは,「オリンパスL-1」にはじまるオリンパスLシリーズに代表される,ズームレンズ一体型フルオート一眼レフカメラの先駆的存在であったとも言えるだろう。
 「サムライ」に搭載されたレンズは,ライカ判換算で35mm〜105mmに相当するズームレンズである。開放F値はF3.5〜F4.3となっており,普及型一眼レフカメラ用ズームレンズのスペックに匹敵するものがある。実際に撮影してみると,描写も細かく,ボケも素直で,想像以上にしっかりした写りをしめす。AFの動作が少々頼りなく,ピントを確認することが困難なファインダーであり,さらにマニュアル機能が皆無のため,とくに動く被写体に対してはピントをはずすことも多いのが残念である。


KYOCERA SAMURAI, No.408210
撮影レンズKYOCERA Zoom Lens 25mm-75mm F3.5-4.3
シャッター速度2sec〜1/500sec
露出制御プログラムAE
ピント調節TTLオートフォーカス
発売1987年

KYOCERA SAMURAI, KYOCERA Zoom Lens 25mm-75mm F3.5-4.3, GOLD100

 「サムライ」の特徴の1つに,ハーフサイズだということがある。
 ハーフサイズカメラは,1960年代にオリンパス「ペン」やリコー「オートハーフ」などによる大ブームがあったが,1970年代半ばにはブームは下火になっていた。ハーフサイズには,1本のフィルムでたくさん撮影でき,カメラも小型にできるというメリットがある。カラーフィルムの改良が進んだ1980年代後半に,ふたたびハーフサイズのブームがやってきた。
 1980年代後半に登場したハーフサイズカメラは,この「サムライ」のほかに,コニカ「レコーダー」(ニューコニカ),フジ「ツイング」などがあげられる。旧来の「ペン」や「オートハーフ」は,フィルム送りが従来のカメラと同様の方向だったので,ふつうにカメラを構えると縦位置の写真になったが,「サムライ」や「レコーダー」はフィルムを二眼レフカメラのように縦方向に送ることで,普通に構えて横位置の写真を撮ることができるようになっていた(「ツイング」については,どうだったか確認していない)。
 ハーフサイズだとふつうに構えると縦位置になってしまう,という問題は「ペン」や「オートハーフ」の時代にもあったようだ。その時代には,従来のカメラのスタイルにとらわれない,斬新なスタイルのカメラもいろいろと登場した。とくに,キヤノン「ダイヤル35」やヤシカ「ラピート」は縦型のデザインで,ライカから発展したと考えられる一般的な小型カメラとは,明らかに異なる,新しい形のものであった。
 ヤシカは経営不振になり京セラに吸収された。その京セラは,新しい形のカメラである「サムライ」を発売した。
 その京セラも,カメラ業界から撤退してしまった。