「片手で写せる」オートボーイシリーズの2代目モデルである。初代「オートボーイ」は,38mm F2.8というこのクラスのカメラとしては一般的なスペックのレンズを搭載していたが,この「オートボーイスーパー」は,40mm F1.9という大口径レンズを搭載した。F1.9という大口径レンズは連動距離計内蔵カメラの時代には珍しくなかったが,フルオートコンパクトカメラとしては2005年に発売されたフジ「NATURA」(24mm F1.9)まで,ほかに例がなかった。「NATURA」は超広角レンズであるから,標準域のF1.9レンズを搭載したフルオートコンパクトカメラとしては,唯一の存在になる。そのためレンズがとても大きく見えて,カッコよい。また,グリップは非常に握りやすくできている。 オートフォーカス機構は,キヤノン独自のSST-AF方式とよばれるしくみを採用している。しかし,後続機でこのしくみが採用されなかったということは,性能面やコスト面などに問題があったのだろうか? 低速シャッターが1/4秒までであることや,プログラムAE専用であることは,せっかくの大口径レンズを十分に活かせないように感じる。室内撮影において,少しでも遠方まで内蔵フラッシュの光がカバーできることをおもな目的としていたのだろう。 実際に使ってみると,カメラはたいへん持ちやすく操作しやすいのだが,動作音が非常に大きくてかん高い。これは,コンパクトカメラとしては,大きな欠点である。
フルオートコンパクトカメラで,F2よりも明るいレンズを搭載したカメラは,およそ20年後,2005年に発売されたフジ「NATURA」まで登場しなかった。このカメラの大きさは,当時のコンパクトカメラとしては,普通のものであったが,現在の基準で考えれば,かなり大きいものである。一時期流行していた「高級コンパクトカメラ」というカテゴリーに含まれる,コニカ「ヘキサー」は35mm F2.0という大口径レンズを搭載していたが,そのボディが「大きい」ことが問題視されていたように聞く。 高級路線を狙った「コニカ ヘキサー」ですら,そのレンズはF2.0である。それに対して,F1.9のレンズを搭載したこのカメラが非常に貴重な存在であることは容易に理解できるだろう。しかし,このカメラが,F1.9の大口径比を生かしているのかというと,疑問が残る。シャッター速度の範囲は,ごく一般的なコンパクトカメラと同様で,最高速が1/400sec程度では,日中の撮影でこのレンズの開放付近を使うことはないだろう。また,低速も1/4sec程度では,夜景などの撮影には不満がでるだろう。そして,プログラムAEのため,どの絞りを使っているのか確認できないことも問題がある。 いや,このカメラはそういう使い方をするんじゃない,気軽に撮るカメラなんだよ,ということなのだが,そう考えるとこのレンズはオーバースペックではないだろうか。大口径レンズを実現するために,レンズ構成も当時のコンパクトカメラで一般的だった3群4枚構成ではなく5群5枚構成のちょっと贅沢なレンズを採用しており,AF機構も精度の高い独自の方式を採用しているため,描写のきちんとした実用性の高いカメラであることは間違いない。
「片手で写せる」オートボーイシリーズの2代目モデルである。初代「オートボーイ」は,38mm F2.8というこのクラスのカメラとしては一般的なスペックのレンズを搭載していたが,この「オートボーイスーパー」は,40mm F1.9という大口径レンズを搭載した。F1.9という大口径レンズは連動距離計内蔵カメラの時代には珍しくなかったが,フルオートコンパクトカメラとしては2005年に発売されたフジ「NATURA」(24mm F1.9)まで,ほかに例がなかった。「NATURA」は超広角レンズであるから,標準域のF1.9レンズを搭載したフルオートコンパクトカメラとしては,唯一の存在になる。そのためレンズがとても大きく見えて,カッコよい。また,グリップは非常に握りやすくできている。
オートフォーカス機構は,キヤノン独自のSST-AF方式とよばれるしくみを採用している。しかし,後続機でこのしくみが採用されなかったということは,性能面やコスト面などに問題があったのだろうか?
低速シャッターが1/4秒までであることや,プログラムAE専用であることは,せっかくの大口径レンズを十分に活かせないように感じる。室内撮影において,少しでも遠方まで内蔵フラッシュの光がカバーできることをおもな目的としていたのだろう。
実際に使ってみると,カメラはたいへん持ちやすく操作しやすいのだが,動作音が非常に大きくてかん高い。これは,コンパクトカメラとしては,大きな欠点である。
(ここで紹介したカメラは,1983年発売のクォーツデートモデルである。)
Canon AF35ML (Canon LENS 40mm F1.9), GC400
フルオートコンパクトカメラで,F2よりも明るいレンズを搭載したカメラは,およそ20年後,2005年に発売されたフジ「NATURA」まで登場しなかった。このカメラの大きさは,当時のコンパクトカメラとしては,普通のものであったが,現在の基準で考えれば,かなり大きいものである。一時期流行していた「高級コンパクトカメラ」というカテゴリーに含まれる,コニカ「ヘキサー」は35mm F2.0という大口径レンズを搭載していたが,そのボディが「大きい」ことが問題視されていたように聞く。
高級路線を狙った「コニカ ヘキサー」ですら,そのレンズはF2.0である。それに対して,F1.9のレンズを搭載したこのカメラが非常に貴重な存在であることは容易に理解できるだろう。しかし,このカメラが,F1.9の大口径比を生かしているのかというと,疑問が残る。シャッター速度の範囲は,ごく一般的なコンパクトカメラと同様で,最高速が1/400sec程度では,日中の撮影でこのレンズの開放付近を使うことはないだろう。また,低速も1/4sec程度では,夜景などの撮影には不満がでるだろう。そして,プログラムAEのため,どの絞りを使っているのか確認できないことも問題がある。
いや,このカメラはそういう使い方をするんじゃない,気軽に撮るカメラなんだよ,ということなのだが,そう考えるとこのレンズはオーバースペックではないだろうか。大口径レンズを実現するために,レンズ構成も当時のコンパクトカメラで一般的だった3群4枚構成ではなく5群5枚構成のちょっと贅沢なレンズを採用しており,AF機構も精度の高い独自の方式を採用しているため,描写のきちんとした実用性の高いカメラであることは間違いない。