カメラ全体が回転することで,周囲360°の光景を,ライカ判の約4.5コマ分のフィルムに写すことができるカメラである。
基本的な使い方は,次のようになる。 グリップを握って,ひもをひっぱる。ひもをひっぱることで,ゼンマイが巻き上げられる。そのひもを放せばゼンマイの力でカメラが回転し,フィルムを巻き上げながら周囲の光景を写していくというものだ。 このカメラに,シャッターという機構はない。レンズの後ろは縦長のスリットになっていて,つねに開いた状態である。カメラが回転していないとき,すなわちフィルムが送られていないときは,そのスリットの幅の分だけ完全な露出オーバーとなり,コマとコマの間を示すことになる。 絞りは,「晴」と「曇」の2段階の「お天気マーク」で示されている。取扱説明書によれば,感度400のフィルムを使うときは実際の天気と「お天気マーク」とをあわせ,感度100のフィルムを使うときは晴れていても「お天気マーク」を「曇」にあわせるようにと,指示がある。取扱説明書によれば,シャッター速度は1/125秒から1/250秒くらい,絞りはF8とF16の2段階とのことである。 SPINNER 360°は,写真機としては完成度が低いと評価せざるを得ない。なによりも,いちばんかんじんなカメラの回転が,必ずしも安定しないのである。ゼンマイの勢いで回るので,1周以上回転して360°以上の範囲が写ることもあれば,360°に満たない範囲しか写らないこともある。カメラの向きや,ひもの引き具合,放し具合も影響するし,フィルムのはじめのほうとあとのほうとで巻き上げの負荷が異なることも影響する。Lomographyの製品からは全体的に,精密な写真機ではなく,写真を撮れるおもちゃであるという印象を受けることが多い。SPINNER 360°も,そういう「おもちゃカメラ」の1つであるといえるだろう。 カメラそのものからも,「おもちゃ」であるという雰囲気を感じることができる。しかし,そんな「おもちゃ」でありながら,妙に立派なフードが付属している。カメラ本体はプラスチック製の軽いものだが,このフードは厚みのある金属製のようで,とてもどっしりと重く感じるものである。なぜこのような不釣り合いなフードが付属しているのか,その理由はSPINNER 360°をいちどでも使ってみるとすぐに理解できる。このフードは,おもりなのである。おもりをレンズ側に取りつけることで,回転時のバランスをとり,全体を重くすることで回転を安定させる効果があるのだ。 おもちゃのようであるとは言っても,360°の範囲をお手軽に撮れるカメラは,そうそうあるものではない。品質的にはやや不満があるものの,写真に関するおもしろい遊び方をいろいろと提案してくれる,Lomographyらしい製品であるといえるだろう。 なお,巻き戻しの際には,レンズキャップが必須である。このカメラにシャッターはないので,レンズキャップをせずにフィルムを巻き戻すと,フィルム全面に露光させ,せっかく撮った写真が台無しになるだろう。だが,Lomographyのことだから,「それも,SPINNER 360°で撮れる意外な写真になる」として,そういう使い方が推奨されることがあるかもしれない(笑)。
LomographyのWebサイトにおける「ロモグラフィーの歴史」(*1)によると,発売は2010年とのことである。
装着されているレンズが25mmという(ライカ判としては)超広角レンズになるので,被写体に接近して撮影しても,天地がじゅうぶんに写りこむ。
上の写真を,Adobe Photoshopの「極座標」変形を利用して処理すると,このような円形の写真をつくることができ,周囲360°の光景を強調できるようになる。
*1 https://www.lomography.jp/about/history ロモグラフィーの歴史 (Lomography)
カメラ全体が回転することで,周囲360°の光景を,ライカ判の約4.5コマ分のフィルムに写すことができるカメラである。
基本的な使い方は,次のようになる。
グリップを握って,ひもをひっぱる。ひもをひっぱることで,ゼンマイが巻き上げられる。そのひもを放せばゼンマイの力でカメラが回転し,フィルムを巻き上げながら周囲の光景を写していくというものだ。
このカメラに,シャッターという機構はない。レンズの後ろは縦長のスリットになっていて,つねに開いた状態である。カメラが回転していないとき,すなわちフィルムが送られていないときは,そのスリットの幅の分だけ完全な露出オーバーとなり,コマとコマの間を示すことになる。
絞りは,「晴」と「曇」の2段階の「お天気マーク」で示されている。取扱説明書によれば,感度400のフィルムを使うときは実際の天気と「お天気マーク」とをあわせ,感度100のフィルムを使うときは晴れていても「お天気マーク」を「曇」にあわせるようにと,指示がある。取扱説明書によれば,シャッター速度は1/125秒から1/250秒くらい,絞りはF8とF16の2段階とのことである。
SPINNER 360°は,写真機としては完成度が低いと評価せざるを得ない。なによりも,いちばんかんじんなカメラの回転が,必ずしも安定しないのである。ゼンマイの勢いで回るので,1周以上回転して360°以上の範囲が写ることもあれば,360°に満たない範囲しか写らないこともある。カメラの向きや,ひもの引き具合,放し具合も影響するし,フィルムのはじめのほうとあとのほうとで巻き上げの負荷が異なることも影響する。Lomographyの製品からは全体的に,精密な写真機ではなく,写真を撮れるおもちゃであるという印象を受けることが多い。SPINNER 360°も,そういう「おもちゃカメラ」の1つであるといえるだろう。
カメラそのものからも,「おもちゃ」であるという雰囲気を感じることができる。しかし,そんな「おもちゃ」でありながら,妙に立派なフードが付属している。カメラ本体はプラスチック製の軽いものだが,このフードは厚みのある金属製のようで,とてもどっしりと重く感じるものである。なぜこのような不釣り合いなフードが付属しているのか,その理由はSPINNER 360°をいちどでも使ってみるとすぐに理解できる。このフードは,おもりなのである。おもりをレンズ側に取りつけることで,回転時のバランスをとり,全体を重くすることで回転を安定させる効果があるのだ。
おもちゃのようであるとは言っても,360°の範囲をお手軽に撮れるカメラは,そうそうあるものではない。品質的にはやや不満があるものの,写真に関するおもしろい遊び方をいろいろと提案してくれる,Lomographyらしい製品であるといえるだろう。
なお,巻き戻しの際には,レンズキャップが必須である。このカメラにシャッターはないので,レンズキャップをせずにフィルムを巻き戻すと,フィルム全面に露光させ,せっかく撮った写真が台無しになるだろう。だが,Lomographyのことだから,「それも,SPINNER 360°で撮れる意外な写真になる」として,そういう使い方が推奨されることがあるかもしれない(笑)。
LomographyのWebサイトにおける「ロモグラフィーの歴史」(*1)によると,発売は2010年とのことである。
Lomography SPINNER 360,ACROS 100
装着されているレンズが25mmという(ライカ判としては)超広角レンズになるので,被写体に接近して撮影しても,天地がじゅうぶんに写りこむ。
Lomography SPINNER 360,ACROS 100
上の写真を,Adobe Photoshopの「極座標」変形を利用して処理すると,このような円形の写真をつくることができ,周囲360°の光景を強調できるようになる。
*1 https://www.lomography.jp/about/history
ロモグラフィーの歴史 (Lomography)