太陽堂光機

ビューティフレックスIV

Taiyo-do / Beautyflex IV

 二眼レフカメラには,いくつかの魅力がある。おもなものの1つは,ファインダーがウエストレベルになっていることだ。上からお辞儀するようにスクリーンを見つめれば,目の前の光景をかなり客観的に見られるような気がする。ほかの大きな特徴としては,画面が正方形の6×6判になっていることだろう。プリントするときには,余白が多く生じてしまったり,あるいは,トリミングせざるを得なかったりするなど,少々不便であるが,ファインダーを通してみる正方形の視野は,たいへん新鮮味を感じることだろう。また,120フィルムで12枚撮りという撮影枚数は,手ごろである。
 二眼レフカメラは,ピント調整の機構から大きく2つに分類できる。1つはローライコードのような,撮影レンズとビューレンズのついたレンズボードがそのまま前後する「レンズボード繰出式」であり,もう1つは「リコーフレックスIII」に見られるような,撮影レンズとビューレンズがギアで連動している「前玉回転式」である。前玉回転式は廉価版カメラによく見られたもので,このカメラも例外ではなく廉価版であった。この後,「ビューティフレックスT」などがレンズボード繰り出し式ながら低価格で発売され,前玉回転式二眼レフカメラの存在は目立たないものとなっていく。「ビューティフレックスIV」は廉価版ながら,しっかりしたダイキャストのボディにコダック式のシンクロ接点もあり,けっして完成度の低いものではないと感じる。このシンクロ接点が横にあることから,このカメラは「ビューティフレックスIV」型に分類される(朝日ソノラマ「クラシックカメラ専科 No.56」より)。
 この時代の二眼レフカメラを手にしてみると,見た目よりも小型で軽いことに驚くだろう。このタイプのカメラは非常に簡単なしくみなので,ピントなどの精度もいまひとつである。しかし,レンズ構成がシンプルなためか,深みはないが透明感のある描写をし,決して悪いものではない。

 太陽堂光機の母体となるカメラ店「太陽堂」は2013年6月末をもって閉店となり,「ビューティ」カメラの歴史は完全に幕を下ろすことになる。

Beautyflex IV, Body No. ---
撮影レンズDoimer Anastigmat 8.0cm F3.5 (No.20198) ビューレンズDoimer Anastigmat 8.0cm F3.5
シャッター速度B, 1/2, 1/5, 1/10, 1/25, 1/50, 1/100, 1/200 コダック式シンクロ接点あり
ピント調節前玉回転式,最短撮影距離 3ft
フィルム送りノブ巻き上げ,赤窓式
画面サイズ6cm×6cm 発売1953年

BEAUTYFLEX IV, Doimer Anastigmat 8.0cm F3.5, EPP

全体に甘いが,すっきりとした印象を受ける。