無銘の暗箱に装着された状態で入手した,古いレンズである。「OT 18×24」と記された座金に取り付けられていたことは,このレンズが18cm×24cmのサイズをカバーすることを示しているものと思われるが,装着されていた暗箱はカビネ判サイズくらいのものであり,実際のイメージサークルの大きさは未確認である。 前玉も後玉も,鏡胴から簡単にはずすことができる。前玉後玉ともに反射像が3つ見えるので,どちらも2枚貼り合わせレンズと思われる。したがって,ラピッド・レクチリニア型あるいはアプラナット型などとよばれるタイプのレンズであると考えられる。「Thomson Brothers 135/16」というレンズを「19世紀のRR広角」として紹介しているblogがある(*1)ことから,「Thomson Brothers」という名称がついた,ラピッド・レクチリニア型のレンズが存在しているということは,間違いないと考えてよさそうである。ただし,件のblogでは,そのレンズの外観などは示されていない。 鏡胴には「Thomson Brothers」「London」「2024」という文字が刻まれている。イギリスの「トムソン・ブラザーズ」という業者が製造・販売にかかわっているのだろうと思われるが,「Thomson Brothers」という業者に関する情報は,いまのところ見つけていない。「2024」はシリアルナンバーと思われるが,これらのほかに,焦点距離や開放F値などを示すと思われる文字や数字は見あたらない。また,「Thomson Brothers」について検索すると,ロゴの書体が違っているが同名のレンズがいくつか見つかる(*2)(*3)。同じようにシリアルナンバーと思われる数値があり,その値が「2024」よりも大きいので,それらはこのレンズよりあとに製造・販売されたものと考えられる。 このレンズに虹彩絞りはなく,絞り板を挿入するためと思われる溝がある。レンズの形式などから,19世紀末ころの製品と想像するが,いまのところ年代を特定する決め手となる情報を見つけていない。
「Thomson Brothers」という業者について,直接にこれにつながりそうな情報をなかなか見つけられないでいる。 写真やカメラに関係しそうな「Thomson brothers」という単語として,清朝末期の写真などで知られる写真家John Thomson氏の伝記のなかで,「イギリスで光学技術者のところで仕事をしたのちに,シンガポールで時計職人の兄とThomson brothersを興した」という内容の記述がある(*4)。また,シンガポールを拠点に仕事をしたのち,イギリスに帰ってロンドンに定住したとのこと(*5)だが,ロンドンでも「Thomson brothers」をやっていたのかどうかは,わからない。John Thomsonや「Thomson Brothers」の活動時期は,ラピッドレクチリニアレンズというものが完成した後のことなので,時代的には整合している。 さて,「Thomson Brothers London」というレンズと,John Thomson氏とは関係ないのか?あるのか?
セットになっていた暗箱を利用して,カビネ判サイズで撮影した。カビネ判サイズはじゅうぶんにカバーしていることが確認できた。このレンズが実際に,より大きな判(18cm×24cm)をカバーするレンズだとすれば,その中心付近だけを使って撮影したことになるわけで,描写に問題を感じないのは当然のことなのかもしれない。
*1 https://blog.goo.ne.jp/goldenbough/e/2b5d0ecf19508b78e9f226a9ca1b047a 「バレルレンズ 2008年05月04日 8×10を始めよう」 (A Moveable Feast)
*2 https://www.catawiki.com/en/l/37099811-thomson-brothers-london-hermagis-2820 Thomson Brothers London Hermagis 2820
*3 https://www.lot-art.com/auction-lots/thomson-brothers-london-hermagis-3826/33145069-thomson_brother-06.1.20-catawiki thomson brothers london. hermagis 3826
*4 http://www.johnthomsonexhibition.org/biography/ BIOGRAPHY (Through the Lens of John Thomson)
*5 https://snl.no/John_Thomson John Thomson (STORE NORSKE LEKSIKON)
無銘の暗箱に装着された状態で入手した,古いレンズである。「OT 18×24」と記された座金に取り付けられていたことは,このレンズが18cm×24cmのサイズをカバーすることを示しているものと思われるが,装着されていた暗箱はカビネ判サイズくらいのものであり,実際のイメージサークルの大きさは未確認である。
前玉も後玉も,鏡胴から簡単にはずすことができる。前玉後玉ともに反射像が3つ見えるので,どちらも2枚貼り合わせレンズと思われる。したがって,ラピッド・レクチリニア型あるいはアプラナット型などとよばれるタイプのレンズであると考えられる。「Thomson Brothers 135/16」というレンズを「19世紀のRR広角」として紹介しているblogがある(*1)ことから,「Thomson Brothers」という名称がついた,ラピッド・レクチリニア型のレンズが存在しているということは,間違いないと考えてよさそうである。ただし,件のblogでは,そのレンズの外観などは示されていない。
鏡胴には「Thomson Brothers」「London」「2024」という文字が刻まれている。イギリスの「トムソン・ブラザーズ」という業者が製造・販売にかかわっているのだろうと思われるが,「Thomson Brothers」という業者に関する情報は,いまのところ見つけていない。「2024」はシリアルナンバーと思われるが,これらのほかに,焦点距離や開放F値などを示すと思われる文字や数字は見あたらない。また,「Thomson Brothers」について検索すると,ロゴの書体が違っているが同名のレンズがいくつか見つかる(*2)(*3)。同じようにシリアルナンバーと思われる数値があり,その値が「2024」よりも大きいので,それらはこのレンズよりあとに製造・販売されたものと考えられる。
このレンズに虹彩絞りはなく,絞り板を挿入するためと思われる溝がある。レンズの形式などから,19世紀末ころの製品と想像するが,いまのところ年代を特定する決め手となる情報を見つけていない。
(反射面の数から推定)
「Thomson Brothers」という業者について,直接にこれにつながりそうな情報をなかなか見つけられないでいる。
写真やカメラに関係しそうな「Thomson brothers」という単語として,清朝末期の写真などで知られる写真家John Thomson氏の伝記のなかで,「イギリスで光学技術者のところで仕事をしたのちに,シンガポールで時計職人の兄とThomson brothersを興した」という内容の記述がある(*4)。また,シンガポールを拠点に仕事をしたのち,イギリスに帰ってロンドンに定住したとのこと(*5)だが,ロンドンでも「Thomson brothers」をやっていたのかどうかは,わからない。John Thomsonや「Thomson Brothers」の活動時期は,ラピッドレクチリニアレンズというものが完成した後のことなので,時代的には整合している。
さて,「Thomson Brothers London」というレンズと,John Thomson氏とは関係ないのか?あるのか?
no name camera, Thomson Brothers (2024), FUJIBRO WP FM2
セットになっていた暗箱を利用して,カビネ判サイズで撮影した。カビネ判サイズはじゅうぶんにカバーしていることが確認できた。このレンズが実際に,より大きな判(18cm×24cm)をカバーするレンズだとすれば,その中心付近だけを使って撮影したことになるわけで,描写に問題を感じないのは当然のことなのかもしれない。
*1 https://blog.goo.ne.jp/goldenbough/e/2b5d0ecf19508b78e9f226a9ca1b047a
「バレルレンズ 2008年05月04日 8×10を始めよう」 (A Moveable Feast)
*2 https://www.catawiki.com/en/l/37099811-thomson-brothers-london-hermagis-2820
Thomson Brothers London Hermagis 2820
*3 https://www.lot-art.com/auction-lots/thomson-brothers-london-hermagis-3826/33145069-thomson_brother-06.1.20-catawiki
thomson brothers london. hermagis 3826
*4 http://www.johnthomsonexhibition.org/biography/
BIOGRAPHY (Through the Lens of John Thomson)
*5 https://snl.no/John_Thomson
John Thomson (STORE NORSKE LEKSIKON)