コダック

DCS 460

Kodak / DCS 460

 1991年にコダックから,世界ではじめてとされるディジタル一眼レフカメラKodak DCS (DCS200発売後は,DCS100と呼ばれるようになった)が発売された。Nikon F3をベースにディジタルバックや画像処理システムを組みあわせたような製品であり,撮像素子は130万画素クラスのものであった。翌1992年には,Nikon F-801をベースに150万画素クラスの撮像素子を用いたディジタルバックを組みあわせたKodak DCS200が発売された。これは,はじめての一体型ディジタル一眼レフカメラとなった。
 1994年には,Nikon F90 (実際には輸出仕様のNikon N90)シリーズをベースにしたディジタル一眼レフカメラKodak DCS400シリーズが発売された。このうちKodak DCS460cは,Nikon N90s (日本仕様ではNikon F90X)に600万画素クラスで27.6mm×18.4mm (いわゆるAPS-Hサイズ)の撮像素子を用いたディジタルバックを組みあわせたモデルで,当時のディジタル一眼レフカメラとして最高の性能を誇るものとなった。Kodak DCS460のバリエーションとして,カラー撮影用のDCS460cのほか,モノクロ撮影用のもの(DCS460m)や赤外線撮影用のもの(DCS460ir)などもあった。ここではもっとも一般向けと考えられる,DCS460cだけをKodak DCS460として取り上げるものとする。
 ここで「一般向けと考えられる」という表現を使ったが,Kodak DCS 460は実際には「一般向け」とは言い難い製品である。最大の要因は,その販売価格にある。KodakのWebサイトに記載されていた日本国内での販売価格は,349万円というものだった。そこに,記録メディア(170MBのPCカード型ハードディスクが標準的な記録メディアだったようである)や,画像を処理するためのパーソナルコンピュータなどを含めると,トータルで400万円から500万円になる。Kodak DCS460の発売は1994年であり,画像を扱いやすいパーソナルコンピュータが一般に普及したのは1995年のWindows95発売以降のことと考えられる。Kodak DCS460発売当時に導入を考えるなら,パーソナルコンピュータをあらたに購入することも無視できない要素だっただろう。

 Kodak DCS460で撮影した画像は,1画像あたり約6MBの.tif形式で保存される。画像の大きさは3060ピクセル×2040ピクセルで,大きさや圧縮率などの変更はできない。このファイルには,サムネイル用のモノクロ画像も含まれる。対応していない画像ソフトで開くと,このモノクロ画像だけが開くので,注意が必要である。
 撮影操作は,基本的にNikon F90そのものである。感度はISO80に固定されており,ホワイトバランスも自動調整のみである。カメラ本体の電源スイッチをONにすると,ディジタル回路もONになる。カメラ本体の電源スイッチをOFFにすると,やや遅れてディジタル回路もOFFになる。背面には,撮影可能枚数とバッテリ残量を表示するための小さな液晶ディスプレイがあるのみで,撮影画像を確認するための液晶モニタはない。撮影したら記録メディアを抜いてパーソナルコンピュータに転送しなければ,撮影した画像を確認できない。そういう意味では,感覚的にはフィルムでの撮影と同じことになる。一方で,背面のSCSI端子でパーソナルコンピュータと接続すれば,撮影した画像をそのままパーソナルコンピュータに保存できる。スタジオでの撮影であれば,ディジタルカメラならではのすぐに画像を確認できるという撮り方もできるようだ。

 Kodak DCS 460には,充電式電池が内蔵されている。バッテリーパックになっているわけではなく,交換はできない。充電は,背面の端子にバッテリーチャージャを接続しておこなう。内蔵されていた電池が劣化して充電できなくなると,バッテリーチャージャを接続しても,正常に動作しないようだ。
 入手時に,内蔵の電池が劣化していたので,ノートパソコン(TOSHIBA Libretto20)のバッテリーパックのなかみを利用して,バッテリーを交換した。そのため現在は,TOSHIBA Libretto20の充電器を利用して充電するようになっている。本来の電池の性能はわからないが,交換したこのバッテリでは,フル充電後におよそ100コマの撮影が可能である。連写は2コマまでで,画像の記録には1コマあたり数10秒かかる。1コマ1コマじっくりと撮ることになるので,そういう面からも,ディジタルカメラというよりフィルムカメラの感覚で撮ることになる。

 撮影した画像は調整方法にもよるのだが,どことなくEktachromeで撮った画像に雰囲気が似ているように感じた。600万画素ではあるが,撮像素子がいわゆるAPS-Cサイズより大きいせいか,なめらかでゆとりがあるように感じる画像が得られる。

Kodak DCS 460c, Body No.460-1736
撮像素子タイプ27.6mm×18.4mm (APS-Hサイズ) CCD 撮像素子画素数620万画素
記録画素数3060ピクセル×2040ピクセル
レンズニコンFマウント
シャッター電子制御縦走り金属幕
シャッター速度B,30〜1/8000スピードライト同調X接点 1/250sec
露出モードプログラムAE,シャッター速度優先AE,絞り優先AE,マニュアル
露出計3D-8分割マルチパターン測光(Dタイプレンズ),中央部重点測光,スポット測光
ファインダー内情報シャッター速度,絞り,露出計
電源充電式電池を内蔵 (9.6V 1700mAh)
発売1994年8月

 Kodak DCS460は,Nikon F90のボディに,ディジタルバックを組みあわせたものである。したがって,Kodak DCS460のカメラ部を取り外し,通常の裏蓋と電池ボックスを取りつければ,ふつうのNikon F90として使うことができる。また,もともとは輸出仕様のNikon N90sが使われているが,これを日本国内向けのNikon F90Xに取りかえることも可能である。
 Kodak DCS460の撮像素子は,ライカ判より小さないわゆるAPS-Hサイズであるため,ファインダーは実際に写る範囲よりも広い範囲が見えている。そこでKodak DCS460に使われているボディでは,ファインダースクリーンに写る範囲を示す黒枠が引かれている。ボディを交換した場合には,ファインダースクリーンも交換するようにしよう。