第6展示室(8)

パノラマカメラ

toy cameras

広い範囲を写したいという欲望

 カメラは,目の前に広がる光景を,そのまま記録できる装置である。しかし,あまりに大きすぎる場合,あまりに広すぎる場合には,その全体を写すことができない場合もある。そのような場合,いくつかの対策が考えられる。
 もっとも基本的なことは,少し後ろに下がることである。そうすれば,より広い範囲が見えるようになるだろう。
 よく使われる方法としては,より短焦点のレンズを使うことがある。ズームレンズを内蔵したカメラならズーム操作で広角側にする,レンズ交換が可能なカメラならば広角レンズにつけかえる,そうすることで,より広い範囲を写すことができるようになる。
 別の方法として,少しずつ写す範囲をずらしながら撮った写真を,あとでつなげるというものがある。ここまでの方法は,「ふつうのカメラ」でも実現可能なものである。
 「ふつうのカメラ」ではないカメラとして,「パノラマカメラ」というものがあった。広い範囲を記録できるように,固定されたフィルムに対してレンズがその向きを変えながら撮影をおこなうものである。似たようなものとして,レンズが固定されており,カメラ全体が回転しながら広い範囲を撮影できるようになっているものもある。これらはそれぞれ,「レンズ回転式パノラマカメラ」「カメラ回転式パノラマカメラ」などとよばれることもある。これらのカメラはその構造上,スローシャッターが使いにくい(長時間露光がやりにくい)。また,広角レンズがつけられていることなどから,被写界深度に期待してピント調整が省かれていたりすることもあり,きれいに撮影できる条件は,やや限定的なものになる。

パノラマ写真は横長の写真

 「回転式パノラマカメラ」で撮影した写真は,一般的な写真よりも横長のものになる。ところで,人間の感覚として,横長の写真はとても広い範囲が写っているように見えるものである。そのような,一般的な広角レンズで横長のフィルムに写すようなタイプのカメラも「パノラマカメラ」とよばれるようになる。この場合,「レンズ回転式パノラマカメラ」や「カメラ回転式パノラマカメラ」と区別するために,「レンズ固定式パノラマカメラ」などとよばれることになる。
 レンズ固定式パノラマカメラでは,通常のカメラと同様のシャッターなどが利用できることから,長時間露光にかぎらず,ファインダーや距離計なども扱いやすくなる。レンズ交換ができる場合もあり,望遠レンズを使った場合でも横長のプリントにすれば「横の広がり」が感じられる,単に広い範囲を写したものとは違ったおもしろさがある。
 「レンズ固定式パノラマカメラ」としては,ライカ判のカメラの天地をマスクして「パノラマフォーマット」で撮影できるようになっているカメラもある。これを「偽パノラマ」などと蔑む意見も見かけるが,ライカ判での撮影と切り替えられるものであればお手軽にパノラマ写真を体験できるわけで,それはそれで悪いものではないと思う。

回転式パノラマカメラ

カメラ回転式パノラマカメラ

ロモグラフィ スピナー360°

Lomography / SPINNER 360°


レンズ固定式パノラマカメラ

パノラマサイズカメラ

 ライカ判(36mm×24mm)の天地を少し隠して細長い画面にしたものが,いわゆるパノラマサイズ(36mm×13mm)である。ライカ判のカメラで「パノラマ途中切り替え」機能をもつものもいろいろあるが,ここではいわゆるパノラマサイズ専用カメラだけを扱う。

フジ パノラマカルディア

FUJI / PANORAMA CARDIA


パノラマカメラ

(maker unknown) / Panorama Camera


ミノルタP's

MINOLTA / P's