ミノルタ

プロッド 20's

MINOLTA / PROD-20's

 クラシックカメラ風の外見をした,シンプルなフルオートのコンパクトカメラである。その丸みを帯びた外見は,強いて言えば,ライカを意識しているように見える。電源として,CR-P2タイプのリチウム電池を使用するが,電池は底蓋を外しておこなうようになっている。フィルムの装填は,蝶番になっている裏蓋を開けておこなうのだが,裏蓋まわりのデザインも,どことなくM型ライカを意識しているように見える。電池を交換するだけのために,底蓋全体を外す必要などないと思うのだが,そこはライカに似たデザインを意識したもの,ということであろう。
 カメラの機能としては,ごく平凡なものである。レンズは35mm F4.5,ピント調整はオートフォーカス,露出はプログラムAEで,さらにフラッシュは常時自動発光となっており,強制発光や発光停止ができない。さらに,フラッシュが充電されていないときには,シャッターレリーズがおこなえない。「確実に写る」ようになっているのだが,シャッターレリーズボタンを押すこと以外,なにもできないカメラである。結局,その外見にしか特徴がなく,その特徴である外見も「なんとなくライカ風」というだけで,魅力を感じるものではない。それでも,うんとコンパクトであればまだ別の魅力が見えてくるものだが,この機能のわりには大柄なカメラである。
 こんなカメラであるが,それでも「なんとなくライカ風」の外見は人気があるのだろうか,中古カメラ店の店頭では,わりと強気の価格がつけられているのをよく見かけたものである。また,「2万台限定」で発売されたとのことだが,「限定」というのも強気の価格の要因となったのであろうか。

 日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」では,1990年9月発行のvol.99にのみ,記載がある(その前後の,1990年3月発行のVol.98にも,1991年3月発行のVol.100にも記載がない)。記載のある,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.99では,「写真を撮るための道具としてだけでなく,人との触れ合いを大切にしたカメラ」であると,アピールしている。また,「全世界で2万台の限定発売」ということになっている。
 なお,コニカミノルタの製品の歴史を紹介するウェブサイト(*1)は,「ミノルタ PROD-20's」の存在にふれていない。このカメラはファッションメーカーとの協同企画商品とのことであり,カメラには「MINOLTA」のロゴがみられない。このことが,ミノルタの製品としてウェブサイトへ記載されなかった理由になるのだろうか?かろうじて底蓋に「MANUFACTURED BY MINOLTA」とあることから,このカメラがミノルタの製品であることを理解できる。
 レンズなどの仕様やフラッシュの機能などに加えて,電源に6Vのリチウム電池を用いている点をふまえると,このカメラの中身は1989年発売のミノルタ「マックメイト」というカメラと同じもののように思われる。「マックメイト」は,日常生活防水仕様でさらにクォーツデート機能がついてメーカー希望小売価格(税別)が31,800円となっていたが,「PROD-20's」は日常生活防水も謳われておらずクォーツデート機能も省略されているものの48,000円という価格が設定されていた。
 結局,機能的にもデザイン的にも物足りず,このカメラが「普通のコンパクトカメラ以上に,すごく綺麗に撮れる」という評判を耳にすることもない。平凡な中身で,ちょっとだけ外見を着飾った,中途半端な製品ということになってしまったのではないだろうか。たとえば,名前だけでもレンズに「ROKKOR」とつけ,それに見あうだけの性能のレンズを搭載していたら,どうだっただろうか。また,製品名の「20's」は,「1920年代風」をあらわしているのだと思うが,そうであればもっとバルナックタイプのライカ風の外見に似せたものにするなど,思い切ったことができなかったものだろうか。そうすれば,もっと注目され人気も出たのではないかと思うのだが,さて実際はどうであろうか。1990年という発売時期から見れば,1988年発売のオリンパス「O-Product」に影響されたもののようにも思われるが。


MINOLTA PROD-20's, No.19018
撮影レンズMINOLTA 35mm F4.5
露出調節プログラムAE
ピント調節アクティブAF 0.95m〜∞
電源CR-P2リチウム電池 1個
発売1990年

*1 http://www.kenko-tokina.co.jp/konicaminolta/history/minolta/1990/list.html