コダック

KZ28

Kodak / KZ28

 コダックは,伝統的なカメラメーカーであると同時に,伝統的なフィルムメーカーでもある。そもそも写真というものは,「術」であった。写真をある程度きれいに撮るには,一定の知識,経験,技術が必要だったのである。写真の便利さ,楽しさが知られるようになれば,誰にでも簡単に写真を撮ることができるカメラが求められるようになる。誰もが簡単に写真を撮ることができるようになれば,フィルムの消費も増えることになる。だから,フィルムメーカーでもあるコダックが,簡便なカメラを次々に発売するのは,ごく自然な流れと言えるだろう。
 この「KZ28」も,そのような簡便なカメラの1つである。簡便に使えるカメラは,あらゆる操作の自動化を進めることになる。一方で,カメラを普及させるには,低価格にする必要もある。「自動化」は,言い換えれば「調整不要」ということだ。調整を「自動化」するかわりに調整不要にすれば,すなわち調整機構をなくしてしまえば,価格を抑えることができる。「KZ28」では,シャッター速度も絞りもピントも,すべて固定され,調整ができない。一方,フィルム装填に関しては,「Easyload」と称する方法で,フィルムを入れて先端を所定の位置に挿入するだけで,自動的に装填が完了するようになっている。
 フラッシュは「常時発光」で,発光禁止にすることができない。フィルムは,感度100,200,400のものが使えるとなっているが,その切り替えスイッチも,DXコードの読み取り接点も見当たらず,フィルム感度が異なっても,動作に変化はないようだ。シャッター速度は1/200秒で固定,絞りはF5.6で固定されているため,室内でのフラッシュ撮影が主の場合は感度400のフィルムを,日中の屋外での撮影が主の場合は感度100のフィルムを使うことが推奨されている。

KODAK Easyload35 KZ28, No.
撮影レンズ29mm F5.6
シャッター速度1/200
絞り5.6
露出調節固定
ピント調節固定焦点 1.2m〜∞
内蔵フラッシュ撮影ISO100=1.2〜3.7m,ISO200=1.2〜5.2m,ISO400=1.2〜7m電源単3乾電池 2本
発売2002年

 レンズ付きフィルムのように,あらゆる調整を放棄した,簡便なカメラである。レンズ付きフィルムと違うのは,ユーザがフィルムを入れかえられる点だ。そこに関しては,操作が簡単確実になるよう「Easyload」というしくみが設けられている。フィルム装填を容易にする工夫は,たとえばキヤノンのニューキヤノネット QL17に見られる「QLシステム」やフジのDL-10 フレンドに見られる「ドロップインローディング」などがあるが,それらとも違った,独自のもののようだ。ただ,「Easyload35」というシリーズは,日本カメラショーの「カメラ総合カタログ」に掲載されたことはなかったようだ。日本国内では,発売されなかったシリーズなのかもしれない。
 KODAKのWebサイト等を参照しても,この「KZ28」というカメラに関する広報等が見あたらないが,これによく似た「KE25」という機種の取扱説明書が公開されていた(*1)ので,上記のスペック等は,それを参考にしている。「KE25」の取扱説明書は,英語,スペイン語,フランス語の3ヶ国語で記載されていることから,アメリカ合衆国,カナダ,メキシコといった,北米圏を対象に販売されたものであろう。一方,「KZ28」には「Made in India」とあるところから,インド周辺で販売されたものではないかと想像する。そうであれば,「KE25」と「KZ28」とは,名称が異なるだけで,中身は同じと判断したいところだ。


*1 http://resources.kodak.com/support/pdf/en/35mm/ke25manual.pdf