ニコン

ニコレックス35II

Nikon / NIKKOREX 35II

 NIKKOREXは,廉価版のシリーズとして発売された,ニコンの一眼レフカメラである。
 このシリーズに含まれるカメラは5機種あり,そのうち4機種はレンズシャッター式でレンズが固定されている。

 NIKKOREXとしてのさいしょのカメラは,1960年に発売されたNIKKOREX 35である。
 一眼レフカメラであるが,フォーカルプレンシャッターではなくレンズシャッターを使用しており,50mm F2.5のレンズが装着されていた。レンズ交換ができないかわりに,広角(35mm F4相当)レンズおよび望遠(90mm F4相当)レンズとして使用できるようになるフロントコンバージョンレンズが用意されていた。
 絞りに連動する,外光式のセレン露出計が内蔵されていたので,扱いやすいカメラであったといえる。
 しかしながらこの機種は,故障が多く発生したようである。一般にレンズシャッター式一眼レフカメラは,動作が複雑になるため,故障しやすい傾向がある。また,以前,ニコンのWebサイトで公開されていたお話し(*1)のなかでは,「組み込まれたレンズシャッターユニットも、このカメラのメカとは必ずしも相性の良いものではなく」ということや「初めての試みとして最終組み立てまで外注先に任せたことも、トラブルの原因」ということが,故障の多い製品となった原因として語られている。

 ここで紹介するNIKKOREX 35IIは,1962年に発売された。レンズシャッターのユニットを,シチズン製のものからセイコー製のものに変えるなどした改良型である。故障はずいぶんと少なくなったそうだが,ヒット商品にはならなかったようだ。
 その理由として,初代モデルの悪評が影響したことが考えられるが,そもそもこのタイプのカメラは,使い勝手がよくないものと思われる。
 カメラは大きく重く,レンズをはずすことができないので,荷物としてどうしても大きくなる。また,使い勝手に関わる大きな問題点として,ファインダーが快適なものではないことを指摘したい。NIKKOREX 35IIは,ペンタプリズムではなくポロミラーでファインダーが構成されている。コストダウンや軽量化などに貢献しているのかもしれないが,Nikon Fのファインダーにくらべてその見え具合はどうしても劣っている。ファインダーの見え具合がよくないと,ピントあわせが難しい。ピントリングに連動する,二重像合致式の距離計を内蔵したビューファインダーカメラのほうが,ピントあわせに関しては間違いなく,快適である。NIKKOREX 35IIは,クイックリターンミラーになっていないことも,使い勝手に悪さにつながっている。

 レンズシャッター式のNIKOREXはこのあと,1963年にNIKKOREX Zoom35が発売されている。これは有名なズームレンズ,43-86mm F3.5をはじめて採用したカメラである。このカメラはあまり売れなかったようであるが,Fマウントの交換レンズとして発売されたZoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5は,よく知られているように大ヒット商品になった。
 その後1964年には,Nikon AUTO 35という,48mm F2レンズが固定されシャッター速度優先AE撮影のできるレンズシャッター式一眼レフカメラが発売されている。名前はNIKKOREXではないが,NIKKOREXシリーズの1つとして位置づけられている。

NIKKOREX 35II, No.205723
シャッター機械制御レンズシャッター
シャッター速度B, 1〜1/500スピードライト同調全速,X
露出計外光式セレンメーター露出モードマニュアル
レンズNIKKOR-Q 50mm F2.5
発売1962年4月

NIKKOREX 35II (NIKKOR-Q 5cm F2.5), Konica 100

NIKKOREX 35II (NIKKOR-Q 5cm F2.5), Konica 100

 ふつうにしっかり,カリッとした描写を見せてくれる。画面内に強い光源がはいるような条件でも,しっかりとした写りを見せてくれる。つまり,写りとしては,まったく問題がない。きれいな写真を撮るための機械として,じゅうぶんな性能をもっている。しかし,このカメラを使いたくなる個性のようなものは,まったく感じられない。きちんとした写真を撮りたいのなら,Nikon Fを使えばよい。お手軽に撮りたいのであれば,少しでも小さく軽い,ビューファインダー式のカメラを使えばよい。結局,「Nikon Fよりは安い一眼レフカメラとして発売された」ことしか魅力がないとも言える。


*1 https://www.nikon.co.jp/main/jpn/profile/about/history/itoko/itoko01j.htm (Internet Archives)
ニコンファミリーの従姉妹たち 第1回「ニコレックス35」と「ニコレックス35II」 (株式会社ニコン)