リコー

リコーフレックスIII後期モデル

Ricoh / Ricohflex model III

 第二次世界大戦後の「リコーフレックス」は,板金ボディ,前玉回転式ピント合わせを採用し,廉価版二眼レフカメラの代表といえるシリーズである。「リコーフレックスIII」は1950年に発売され,後の「二眼レフブーム」の嚆矢になったとされる。
 このタイプの「リコーフレックス」に共通する特徴として,ピント調整の機構があげられる。撮影用レンズとファインダー用レンズの外周がギア状になっており,これらがかみあうように動くことで,撮影用レンズとファインダー用レンズのピント調整が連動するようになっている。シンプルで調整しやすく,低価格化と機能・性能の維持の両立に大きく貢献したものと思われる。
 そのほか全体的にシンプルな構造になっており,たとえば巻き上げには自動巻き止め(一定量のフィルムを巻き上げたらなんらかの形でロックがかかるようになっているしくみ)がなく,裏蓋の赤窓を開いて,フィルムの裏紙に印刷された番号を目視してフィルムを送る「赤窓式」になっている。「赤窓式」の場合,暗いところでの巻き上げは難しいが,自動巻き止め機構がないのでその故障の心配がないというメリットもある。
 ファインダーフードは,4枚の板がそれぞれ別々にたたまれている。開くのは気にならないが,たたむのがやや煩雑である。ここは後の機種で,前後2つのグループにわかれたものに変更されていく。また,ファインダーにルーペが用意されていないため,ピントあわせがやや困難である。
 裏蓋のロックは,板バネ状のストッパーに突起をひっかけるだけのものである。ここは後の機種で,板バネを押さえつける機構が追加されており,不意に開く危険性がなくなるように改良された。

 なお,このカメラの入手時には,貼り革がほとんど朽ち果てていたので,別のものに貼りかえている(「撮影日記」参照)。本来は黒い革が貼られており,発売当初から茶色い革が貼られていたわけではない。

Ricohflex III, Lens No.36283C
撮影レンズRicoh Anastigmat 8.0cm F3.5 ビューレンズRicoh Viewer 8.0cm F3.5
シャッター速度B, 1/25, 1/50, 1/100 (Riken)
ピント調節前玉回転式,最短撮影距離3.5ft
フィルム送りノブ巻き上げ,赤窓式
画面サイズ6cm×6cm 発売1950年

 このカメラは「MIOJ」(「占領下の日本製」表示されている)品である。「Made in Occupied Japan」の表記は,底面の三脚ネジ穴の周囲にある。