カメラベルク(KW)

ヴィータフレックス

KameraWerk / Vitaflex

 ヴィータフレックス(ヴァイタフレックス)は,プラクチカなどで有名な,ドイツのカメラベルク(KW)社から発売された小型カメラである。Voigtlander社の「Brillant」によく似ている。発売時期は不明であるが,「Brillant」をさらに簡素にしたスペックなので,その廉価版としての位置を狙って,それ以後に発売されたものではないかと想像している。
 二眼レフカメラの特徴として,ファインダーを見ながらピント調節ができる,というものがある。その機構には,代表的な高級機であるローライフレックスなどにみられる「レンズボード繰り出し式」のほかに,リコーフレックスIIIなどにみられる「前玉回転式」のような簡素なメカニズムのものもあるが,どちらも,ファインダーで被写体をとらえながら,ピント調節ができるということには,かわりない。
 それに対し,ヴィータフレックスの場合,撮影レンズのピント調節は目測式であり,ビューレンズとは連動していない(ビューレンズは固定焦点である)。ファインダーで被写体を見ながらピントを調節するという,二眼レフカメラの特徴がスポイルされている。また,ビューレンズに目を向けると,これは,ボックスカメラのファインダーレンズのような印象を受ける。したがって,ヴィータフレックスは,スタイルを二眼レフカメラに似せながら,ファインダーを改良したボックスカメラであると考えることもできる(これは「Brillant」にも共通して考えられることかもしれない)。
 ヴィータフレックスは,120フィルムを使用するが,フィルム装填は中枠を抜いておこなうようになっており,全体にコンパクトなものになっている。
 フィルム送りは赤窓式であるが,赤窓は通常の6×6判用の数字が書かれている位置にはなく,6×9判用の数字が書かれている位置にある。このことから,発売当時の120フィルムの裏紙には,6×6判用の番号がついていなかったものと想像できる。赤窓は,6×9判用の位置に3箇所あり,上側と下側の窓には「1.3.5.7」,中央の窓には「2.4.6.8」の数字が刻まれている。この赤窓は,次のように使う。

・1コマ目 下側の窓に「1」を出す。
・2コマ目 上側の窓に「1」を出す。
・3コマ目 中央の窓に「2」を出す。
・4コマ目 下側の窓に「3」を出す。
・・・・
・11コマ目 上側の窓に「7」を出す。
・12コマ目 中央の窓に「8」を出す。

Vitaflex, Body No.---
撮影レンズBrillantar Anastigmat 7.5cm F4.5 ビューレンズ無名
シャッター速度T, B, 1/25, 1/50, 1/100
ピント調節目測式,最短撮影距離5ft
フィルム送りノブ巻き上げ,赤窓式
画面サイズ6cm×6cm 発売1930年代後半?

Vitaflex, Brillantar Anastigmat 7.5cm F4.5, ACROS100
Vitaflex, Brillantar Anastigmat 7.5cm F4.5, ACROS100

チープなボディに似合わないシャープな写りを示すが,周辺減光はかなり大きい。