OKUHARA CAMERA MFG, Osaka

組立暗箱

Okuhara camera

 このカメラは,長く「OKUHARA CAMERA」としてここで紹介してきたが,2020年6月になって「OKUHARA CAMERA MFG CO, LTD」のものではなく,「M.S.K.」のものであると判断するようになった。こちらの,「M.S.K.」のカメラとして書き直したページをご参照いただきたい。「OKUHARA CAMERA」などについても,その後に判明したことをふまえて,追記・修正をおこなっている。

 八切あるいは四切1/2のようなサイズの撮影が可能な,大型の木製カメラである。大型カメラであるが,蛇腹が使われており,持ち運ぶときなどには折りたたむことができる。撮影のときには,折りたたんだ状態から,レンズボードやピントグラスを起こす必要がある。このことから,この種のカメラは,組立暗箱とよばれる。
 アオリは可能だが,フロント部のシフト/フォールのみに限定される。レンズボードも木製であるが,入手時には,リンホフタイプのボードが使えるように加工されたものも含まれていた。木製ボディだからこそ,可能だった改造ということだろう。
 フォーカシングノブは前後にそれぞれあり,蛇腹を長くして使うときは前方のノブを,蛇腹を短くして使うときは手前のノブを操作するようになっている。

 このカメラには,「OKUHARA CAMERA MFG CO.LTD」というプレートがついていた(厳密には,カメラ本体ではなく,一部のバックアダプタについていた)。この「OKUHARA CAMERA」は,大阪にあったメーカーのようであるが,この組織が現存しているのかどうかはわからない。また,カメラメーカーとしての活動期間やこのカメラそのものの製造年代などもわからない。一般向けのものではなく写真館など業務用に特化した機材のようで,カメラ雑誌に広告を出すような性格の製品ではないようだ。そのため,このカメラについての資料を見かけることもない。資料を見かけることがないのに対して,「OKUHARA CAMERA」というプレートのついた組立暗箱は,中古カメラ店やインターネットオークション等でたまに見かけることがある。つまり,それなりの量が市場に流通していたものと想像できる。組立暗箱としては,決して希少なものなどではなく,むしろきわめてポピュラーな製品だったのかもしれない。

 このカメラと同時に入手したレンズは,上の画像にもあるFUJINAR 21cm F4.5である。

OKUHARA CAMERA
レンズボード木製
画面サイズカビネおよび四切1/2を標準とする

 入手したセットには,次のような4種類のバックアダプタが付属していた。

 4×5判用のアダプタである。このアダプタには,「OKUHARA CAMERA」のプレートがなく,材質も本体と異なるようなので,後に別のところでつくられた可能性もある。一般的な4×5判用のフィルムホルダが使用できるようになっている。


 カビネ判用のアダプタである。このアダプタには,「OKUHARA CAMERA」のプレートがあり,この組立暗箱本来のセットの1つであろう。


 八切判用のアダプタである。このアダプタには,「OKUHARA CAMERA」ではなく「M.S.K OSAKA」のプレートがあり,材質も本体と異なる。


 四切1/2判用のアダプタである。このアダプタには,「OKUHARA CAMERA」のプレートがあり,この組立暗箱の本来のセットの1つであろう。四切1/2判は,ライカ判よりも細長い形状で,集合写真向けのフォーマットだったと思われる。その長さを利用して「ややパノラマ」な写真を撮るのもおもしろい。

 このカメラが流通した時期としては,昭和30年代から昭和40年代初期にかけてが考えられる。香川県立ミュージアムにこれと同じく「OKUHARA CAMERA」というプレートのついたカメラが所蔵されており(*1),問い合わせたところ,「昭和30年頃に仕事をはじめてから2台目のもので,カラーに移行するころに購入した」という回答が得られた。


*1 http://www.pref.kagawa.lg.jp/kanzouhinkensaku/index.php/rekishi/kaidai/269
   「廣瀬家資料」(香川県立ミュージアム)